フジテレビのモニタリングチェックが機能しない理由
現在フジテレビには、タレントの中居正広氏の女性トラブルに幹部社員が関与している旨が報じられており、海外から人権問題や企業統治の欠陥が指摘されている。国内ではフジテレビの対応の遅れや、説明が不十分だった港社長の記者会見を受けて、スポンサー離れが進んでいる。とうとうフジテレビの親会社であるフジ・メディアHDの株主であるヤクルトまで、CMの差し止めを決めた。
週刊誌などによると、中居氏とトラブルがあったのは芸能関係者の「X子さん」で、一部では元フジテレビの社員と報道されている。2023年6月、中居氏との間に性的トラブルが発生し、その際にX子さんはフジテレビ関係者に相談したにもかかわらず、会社は実態を調査せず対策をとらなかった。
中居氏とのトラブルや、社員の会食(接待)など、人権問題にもかかわる重要な内容だったにもかかわらずだ。同社が実態調査を放置したのは、モニタリング体制の不備や、組織の不正や不祥事防止、公正な判断・運営がされるよう監視・統制する企業統治の仕組みが機能していないからだと言えよう。
企業統治の問題は、フジテレビのようにグループ会社を多数抱える大企業に多く見られ、そういった企業ではビジネスにおける不正取引件数も増えやすい。取締役会や専門委員会*でのモニタリングチェックが機能しないことにより、現場で部下が上司の不正に「NO」を言えず、内部告発も機能しにくいためだ。人権問題だけでなく、不正にも発展しやすくなるのである。
本来は、独立性のある社外取締役や外部監査役、外部弁護士が必要であり、社外取締役などの外部役員が、不祥事になる前に、起きている問題をいち早く察知して指摘し、改善を求めるべきだ。それが大企業、特にフジテレビのようなホールディングス企業(持ち株会社)傘下の企業の場合では、チェック機能が弱くなりやすい。巨大組織ゆえに利害関係者が増えてしまい、外部役員はグループ関係者やOBのメンバーで固められる傾向もある。
実のところ、フジ・メディアHDの場合は、監査や外部役員はほぼすべて関係者で占めている。そうなると、問題に気が付いていても「長年の習慣だから仕方がない」などと目をつぶることになりやすい。改善したほうがいいと思っていても、なあなあな関係になっており、新しい風を吹き込みづらくなる。つまり、問題点を指摘して意見をし、改善を促すといったモニタリングが機能しないのである。
では、具体的にフジテレビの企業統治はどうなっていたのか。