正気じゃないけれど……奥深い文豪たちの生き様。42人の文豪が教えてくれる“究極の人間論”。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、意外と少ないかもしれない。「あ、夏目漱石ね」なんて、読んだことがあるふりをしながらも、実は読んだことがないし、ざっくりとしたあらすじさえ語れない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文学が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)。【性】【病気】【お金】【酒】【戦争】【死】をテーマに、文豪たちの知られざる“驚きの素顔”がわかる。文豪42人のヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な生き様”を一挙公開!
![誰も見向きもしなかった「ゾッキ本」…宮沢賢治の詩集を発掘した有名詩人とは?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/450/img_8350f32cd92d62421a639d267b32a2de303575.jpg)
宮沢賢治のおすすめ著作★3選
岩手生まれ。盛岡高等農林学校(現・岩手大学農学部)卒。代表作は『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』『注文の多い料理店』など。商家の長男として生まれるが、幼少期から病弱で内向的な性格だった。早くから仏教に関心を抱き、特に法華経に傾倒。盛岡高等農林学校在学中に文学への関心を深め、在学中に詩や童話を書き始める。卒業後は農学校の教師として働きながら創作活動を続けた。大正13(1924)年には自費出版で童話集『注文の多い料理店』を刊行するも、当時はほとんど評価されなかった。自身の理想郷を「イーハトーヴ」と名づけ、無料で肥料計算の相談にのったり、土地を開墾して自身で野菜を売り歩いたりした。昭和8(1933)年に37歳で急性肺炎のため早世。
◯『心象スケッチ 春と修羅』(『宮沢賢治コレクション6 春と修羅:詩Ⅰ(シリーズ・全集)』筑摩書房に収録)
大正13(1924)年に刊行された詩集。商業出版ではなく、賢治自身が製作費を担った自費出版で、岩手・花巻にある「吉田印刷所」というところで1000部を印刷しました。
「禁欲」という重い枷を自分自身に科した理由や、自然と調和するために賢治が求めていたことなどが垣間見える詩集です。
◯『新編 銀河鉄道の夜』(新潮文庫)
『よだかの星』『セロ弾きのゴーシュ』など名作14篇が収録されています。表題作の『銀河鉄道の夜』では、主人公ジョバンニと親友カムパネルラを中心に物語が進みます。
銀河を走る列車に乗り、宇宙を旅する2人。ジョバンニが星々や自然に対して救いを求める姿は、賢治自身の宗教的な探求や自然への愛着と共鳴しているようにも読みとれます。
◯『新編 宮沢賢治詩集』(新潮文庫)
生前に発表された詩だけでなく、賢治のノートに残されていた草稿も含めた全132篇を収録した作品集。特におすすめなのが、『生徒諸君に寄せる』という詩。
賢治が書き続けた「自然と人間の共生」というテーマは、SDGs(持続可能な開発目標)など現代の課題にもつながり、賢治の洞察力に驚かされます。
話題の引き出し★豆知識
賢治の才能をいち早く見抜いた中原中也
賢治は『心象スケッチ 春と修羅』を1000冊、自費出版しました。それを東京で売るため出版社「関根書店」の経営者・関根喜太郎に500冊の配本を頼みましたが、関根はそれを新刊本にもかかわらず、新本ながら正規の定価よりも安く売られる「ゾッキ本」として古本屋に安く流してしまったのです。
定価は2円40銭でしたが、古本屋ではわずか50銭で売られていたところもありました。ところが、それを偶然見つけたのが中原中也でした。夜店で5銭で売られていた『心象スケッチ 春と修羅』を中也は買い集め、知人に配ったのです。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。