自分のこころと体を守るための
「さわってほしくないチェックリスト」

 今回は、撮影中に監督の演出方針が変わるという緊急性の高いケースを紹介したが、では前日の提案ならよいのか、というとそういう話ではない。本来であれば、撮影開始前の脚本段階で俳優と十分に打ち合わせて、双方同意のうえで演出方針をまずは固め、その上でインティマシーコーディネーターの雇用を必要に応じ検討すべきである。

 インティマシーコーディネーターとは、映画やドラマなど、映像の現場において、俳優らの身体接触や性的な演技、ヌードなどが演出上求められる際に、演出側と実演家の間に入り、双方の意向を調整しながら効果的な演出へとつなげる仕事で、俳優の尊厳をどう守るかという観点からも、近年注目され需要の高まる職業である。

 最後に。この記事を今読んでいるかもしれない俳優部の方へ。「ここは写されたくない」「ここは触ってほしくない」という意思表示を自分では行いづらいと感じるときが今後あれば、ひとりで抱え込まず、まずはマネージャーや第三者、現場で信頼できる方に相談しできるだけ素直な気持ちを座組に伝えてほしい。どうしても言いづらい方がいれば、例えば日本芸能従事者協会が作成する「さわってほしくないチェックリスト」が公式サイトからダウンロードできるので、必要に応じて利用してほしい。

図表:さわってほしくないチェックリスト同書より転載
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映画業界は特に酷い…
アカデミックハラスメント

 こういった撮影中に起きる問題のみならず、撮影外においても監督やプロデューサーから俳優へのハラスメント、あるいはレイプに相当するような深刻な性被害は残念ながら起きている。