「何でも好きにやっていいよ。その代わり、必ず台数を伸ばせよ」

F:仮想敵は、もちろんN-BOXで。

鈴:いや、敵というか……N-BOXさんは当時のスペーシアを敵として見ていなかったと思いますよ。ホンダさんには相手にされていない。市場にも相手にされていない。ボロボロのボロ負けです。

F:辛いなぁ……造り手としてお辛いですよね。初期のスペーシアはそんなに弱かったですか。

鈴:はい。本当に三番手、四番手で。2012年から13年は日産、三菱さんに抜かれてもおかしくないような状況で……とにかくなんとかしなきゃいけない。本当にヤバいから、もう何をやってもいいよって話になったんです。スペーシアとカスタムを出すから、3本目の柱はもう何でも好きにやっていいよ、その代わり必ず台数を伸ばせよ、と。

F:ひでぇ(笑)。なんでもいいからともかく売れと。

鈴:売れと(苦笑)。それでいろいろ考えていく中で、「スズキだったらSUVが一番売りやすいんじゃないか」という思いがありまして。

鈴木猛介さんとフェル鈴木猛介さんとフェル Photo by A.T.

スズキが得意なモノとは?と考えて出た答えが「SUV路線」だった

F:確かに。何しろスズキにはジムニーがある。

鈴:そう。ウチにはジムニーがある。ハスラーもある。「スズキという会社はそもそも何が得意なの?」と言われたら、ウチはSUV系のクルマが得意ですと答えられるんじゃないかと。でも我々はそれをキチンと表現できていないんじゃないかと。周りを見渡せば、他社もやっていない。それならこの線は行けるんじゃないの、という。

F:なるほど。それで軽スーパーハイトワゴンのSUVを。

鈴:そうです。ただ、ジムニーのような本格的な走破性を求めてしまうと、こんな背の高いクルマは簡単に横転してしまう。

F:何しろ車高が高いですからね。ムチャをすればひっくり返っちゃう。