いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

居場所に満足する
……とはいえ、じつのところ、あなたは旅をしているわけではない。
さまよい、追い立てられ、あるところから別のところへと居場所を変えているにすぎない。
あなたが探し求めていること、つまりよく生きることは、どこでも見つけられるというのに。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
異世界転生の魅力
私はいわゆる「異世界転生もの」の作品が好きだ(もっとも好きなのは「Re:ゼロから始める異世界生活」、通称リゼロ)。
異世界転生もののストーリーでは、現実世界で活躍できていないキャラクターが、異世界に来たら超絶ミッションに挑むことになって、すごい能力を発揮したり、とんでもないスピードで成長したりする。
旅に出て人生を変えるどころか、世界の設定自体を変えることで人生を変えるというダイナミックなやり方である。
「このくらい思い切って居場所を変えられればなぁ!」という中二病心をくすぐられる。
環境を変えたら人生は変わるか?
いまよりもっと人生をよくしたいと思ったときは「場所を変えるといい」とよく言われる。
人間は環境に左右されやすく、環境によって気分も意識も大きく変わるからだ。
愚痴や悪口、噂話をしがちなグループの中にいれば自分も愚痴っぽくなるだろうし、前向きに夢を語りがちなグループにいれば自分も遠慮せずに夢を語るようになるだろう。
ところが、ストイシズムの哲人、セネカは「ちがう」と言う。
「(よく生きることは、どこでも見つけられるというのに)あるところから別のところへと、居場所を変えているにすぎない」とぶった斬る。
ストイシズムでは、外的な環境がどんなものであれ、よく生きることをもとめ、内面を高めることこそが大事だと考えるのだ。
異世界転生したキャラクターも、じつはまったくの別人になるわけではない。
場所が変わることで結果としてその人の能力やキャラクターが際立つだけであり、たとえチート能力を得たとしても、生き方や人格などの本質は変わらない。
一流は「まわりに左右されずに自分を伸ばす」
もっとも、まわりに左右されずに自分を伸ばすには、精神的な鍛錬が必要だ。
本書は、ストア哲学者たちの名言を読み、その教えを自分の人生にどう適用するかを考え、記録することを勧める。そのため、一つひとつの名言に対して、具体的な課題が書かれている。
この鍛錬を通じて、環境に左右されずによく生きていけるよう自分を磨いていきたい。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)