ところが、この投稿に対して、尋常ではない反響が返ってきた。それまで、私の投稿を見て反応してくる人の数はせいぜい100人程度だったのだけれど、父の「ダダダダーン」への反応は、桁数が違っていた。画面を見ていると、1秒ごとにコメントが入ってくる。いわゆる「バズる」という状態になっている。中には「この戦闘機はF4Uコルセアです」と、丁寧に指摘してくれた人もいた。

 あのときは本当にびっくりした。

 しかも、閲覧者は異口同音に、父の漫画を褒めているではないか。

――悲惨なできごとを描いているのに、ユーモアがあって好感が持てる。

――温かい感じ、優しい感じのこの絵がなんとも言えず好き。

――手書きの文字がいい。もっとお父様の漫画を見たい。

――お父様のファンになった。ぜひこの漫画を出版していただきたい。

「これで、長生きができるなぁ」
喜んだ父に感じた生命力

 この反響を真に受けて、急遽、私は児童書を書くことにした。いっしょに仕事をしている児童書の編集者が父の漫画を以前から気に入ってくれていたことを思い出して、彼女に声をかけてみたところ、即決で「出しましょう」というお返事。

 児童書として書こうと思ったのは、父の戦争体験を私が書き残して伝えたいのは、子どもたちだと思ったから。自分の意志の有無にかかわらず、戦争とは、子どもを巻き込み、洗脳し、一億総玉砕まで連れていってしまう、そんな恐ろしさがある、ということを、私は子どもたちにこそ、伝えたかった。

 こうしてできあがったのが『川滝少年のスケッチブック』(講談社)である。4冊の絵日記のうち、少年時代の2冊は、ほぼそのままの形で掲載されている。

 この本が完成したとき、父はこう言って、喜んでくれた。

「これで、長生きができるなぁ」

 なんという旺盛な生命力だろうか。なんという楽観主義。

 父はこのときすでに90代。「いい冥土の土産ができた。これで思い残すことはない」と言うのが普通ではないだろうか。親に向かってそんなことを言う娘がどこの世界におる!という声が聞こえてきそうですが。

 児童向けに書いたこの作品。蓋をあけてみれば、父と同世代の戦争体験者から、そして私と同じ、戦争体験者を親に持つ世代など、年配者からの支持と共感、熱いエールをたくさんいただいた。一方で、プロの画家、イラストレーターからは、父の絵に対する過分な評価をいただいた。「線に迷いがない」「建物の絵がうまい」「上手過ぎないところがいい」「お父さんはプロの漫画家ですか」などなど。