マネーフォワード流
プロダクト開発におけるデザインの活用法

勝沼 社内にはデザインに対する考え方の温度差もあるかと思います。デザインの価値に対する理解を深めるために取り組んでいらっしゃることはありますか。

 経営レベルでいうと、例えば経営陣の合宿でCDOの伊藤セルジオ大輔がMVVCとデザインの関係について話すといったことはこれまで何度も行ってきました。一般社員に対しては、プロダクト開発にデザインの考え方を組み込んだ方法論を提示して、実践してもらっています。

マネーフォワードの社長が全社員に向けて話す内容をデザイナーと決めている理由――マネーフォワード代表取締役社長グループCEO・辻庸介氏インタビューYOSUKE TSUJI
京都大学農学部を卒業後、米ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー(当時)、マネックス証券を経て、2012年マネーフォワード設立。新経済連盟幹事、経済同友会幹事、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム エグゼクティブ・コミッティー。
Photo by YUMIKO ASAKURA

勝沼 プロダクト開発におけるデザインの活用法とはどのようなものですか。

 ひと言で言うと、プロセスのデザインです。開発のステップを細かく設定し、仮説検証とプロトタイピングを繰り返しながら完成に近づけていく。そんなプロセスをセルジオを中心に設計してもらいました。マネーフォワード流のアジャイルのデザインといってもいいかもしれません。

勝沼 社内のデザイナーの数も増えているのでしょうか。

 年々増えていますね。僕は、一つのプロダクトに最低1人か2人の選任デザイナーがいることが望ましいと考えています。機能を作るフェーズだけではなく、ユーザー体験の設計にもデザインの力が必要だからです。ですから、プロダクトが増えれば、デザイナーの数も増えることになります。

勝沼 デザイナーの数が増えるということは、デザインに対する投資が増加するということですよね。それに対する反対の声は社内にはありませんか。

 まったくありません。逆に、デザインをもっと強化してほしいという意見が大多数です。

勝沼 デザイナーの皆さんの所属先は、製品開発部門がやはり多いのですか。

 サービスや製品開発を担当する各事業部に所属するデザイナーが多いですね。ただし、それぞれのデザイナーの人事評価は事業部を横断して統一的に行っています。その調整もまたCDOの仕事です。人事評価だけではなく、デザイン組織の5年後、10年後のビジョンを提示し、それを見ながらそれぞれのデザイナーがキャリアビジョンを立てていく。そんな仕組みを作っています。