ひとつは暴力行為。つまり殴られたり、備品を投げつけられたりした場合だ。私は通帳で頬を引っ叩かれたことがあるし、拳で頭を数発殴られたこともある。こうなると暴行罪が成立するので、何のためらいもなく110番できる。
大声でわめいたり、長時間居座るなどの迷惑行為は、威力業務妨害罪に当たる。この場合は、相手に警察を呼ぶことを伝えることにしている。
「少しお静かに願います。他のお客さまが迷惑に感じておられます。これ以上お続けになるならば警察を呼びますが、よろしいでしょうか?」
しかし、興奮状態にあればこちらの話など聞く耳など持たないこともある。
「呼びたければ勝手に呼べ!」
もともと自分が正しく、銀行が間違えていると信じて疑わないわけだから、警察なんか怖くはないと見える。
振り込め詐欺の被害防止への
警察の対応に疑問も
一方で、警察がしっかりと対応しているのか伝わらないこともよくある。週に2~3回はかかってくる、このような電話だ。
「こちらは神奈川県警です。振り込め詐欺の被害情報をお伝えいたします。今朝から振り込め詐欺の手口と思われる電話が高齢の複数世帯にかかっています。手口といたしましては、『母さん、会社のお金に手をつけてしまい、今日返さないとクビになる』とか『父さん、交通事故を起こしてしまった。示談金を払わないと相手から何をされるかわからない』などと言い…」
こうした電話の多くは女性の声で抑揚がなく、TikTokのAI音声のようで、聞いていると薄気味悪くなるし、緊張感のない語り口調に苛立ちさえも覚える。拙著『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』でも全く同じことを書いたのだが、発刊から2年以上経った今なお、この電話は相変わらずかかってくる。
最初の頃は、関心を持って耳を傾けていた。ある日、話の途中で質問をしたことがある。
「それは、どちらの地区で電話があったのでしょうか?」