「誰でもいいから巻き添えにして死のうと思った」
韓国では日本と異なり、放課後の課外活動などは外部講師に委託されているケースが多く、教師の退勤時間は比較的早い。事件発生時刻の午後5時前は、多くの教師が既に退勤していた可能性があり、これが死角となったと見られている。
女性教師は犯行を認め、「誰でもいいから巻き添えにして死のうと思った」と供述している。事件直前に近隣で凶器を購入していたことも判明し、計画的な犯行であったことがうかがえる。
問題となっているのは、この教師の勤務状況である。昨年12月から精神的不調を理由に6カ月の休職を申請していたにもかかわらず、年末に突如「体調が回復し問題ない」との医師の診断書を提出して復職していた。さらに、事件数日前には学校備品を壊して破損したり、同僚教師へ暴力をふるったりと、異常行動が確認されていた。こうした前兆に対する学校や教育庁の対応の遅れが問題視されている。
事件の犠牲となった女子児童の父親は、マスコミの取材に応じ、児童の実名と顔写真を公開した上で「どうか娘の死を無駄にしないでほしい。このような事件が二度と起きないことを願う」と訴え、多くの人々の心を打った。SNS上では事件を悼む声が相次ぎ、子を持つ親からは「学校にすら安心して子どもを送れないのか」という嘆きの声も上がっている。
メンタルの不調による教師の休職や退職が増加~教育現場の課題
大田では2023年、小学校教師が保護者からの執拗かつ過度なクレームによって精神的に追い込まれ自死する事件が発生し、社会に波紋を広げていた。性質は異なるものの、同じ都市で教師に関わる事件が続いて起こったことは、市民はもとより国民の心にも深い影を落としている。
近年、韓国では教師のメンタルヘルスの悪化による休職や退職の増加が社会問題となっている。これまでは教師の自死が問題視されてきたが、今回は精神的な問題を抱えた教師が児童を無差別に加害するという前例のない事態であり、韓国社会は大きく動揺している。