雷で大粒の雪と氷晶が突風で吹き付ける
シャーベット地獄から抜けても別の地獄
充電率を75%まで回復させて直江津をスタート。と、ここでなんと雷に出くわす。閃光が時折あたりを明るく照らし、大粒の雪と氷晶が、風速10m超と思しき突風に乗って遠慮なしに吹き付けてくる。ホワイトアウトまではならなかったが、南国出身の筆者にとっては大いにドラマチックな展開である。
39.1km走行、充電残27%で糸魚川の日産ディーラーに到着。幸運にも積雪深約10cm。このくらいであれば充電器までたどり着ける。19分間、75%まで充電した。長野方面へは全般的に登り坂だが、あわよくば56kmほど先、標高800mにある道の駅白馬の充電器まで行けないかと考えた。もしダメならそれよりはるか手前の北小谷にも充電スポットがある。
糸魚川から信濃大町、さらに長野市経由、飯山までの区間は、最も厳しい道程となった。まず、消雪装置によって生じた深いシャーベットをかき分けての走行。クルマの底面やホイールハウスをシャーベットの飛沫が叩き、アクセルペダルを離すとあっという間に失速してしまう。走行抵抗のせいで電費は4km/kWhを切り、充電率はみるみる落ちていった。
シャーベット地獄から抜け出すと、今度はまた別の地獄が。この日の国道148号は夜間の除雪が追い付いておらず、床が柔らかい雪面に頻々と接触しながら走る深雪路となっていた。交通量はゼロではなく、たまに通る物流トラックによってワダチが掘られていた。が、軽自動車とは左右輪の間隔がまるで違っており、トレースにはほとんど役立たなかった。
かつて冬季の難所として知られていた国道148号の県境越え区間。今は長大なスノーシェッドやトンネルが至るところに設けられ、本当に走りやすくなった。それでも合間に出現する深雪路はなかなかの厳しさ。ふかふかに耕された畑を走るようなもので、県境付近の登り勾配では直登が難しくなり、ステアリングを左右に蛇行しながら走った。
除雪でできた雪壁で幅員が狭められた道、その両脇にはたっぷりとした着雪で枝が重そうにしなった針葉樹林――。寂寥感いっぱいの雪道を1時間ほど走ると、ようやく遠くに煌々とした照明が見えてきた。道の駅小谷である。
充電率を見るとたった33.5kmの走行にもかかわらず残存20%。糸魚川から充電率にして55%を消費していた。20km以上先、標高もさらに400mほど高い道の駅白馬まではとても届きそうになく、充電することにした。
道の駅小谷はドカ雪というほどではなかったが、それでも急速充電器までの道はわりと険しく、車体で軽く雪をかき分けながらのアプローチだった。
そこで感心させられたのが、電気モーターの駆動力制御だ。通常、フロアが雪面にのしかかると車輪が空転してスタックしがちなもの。しかし、サクラは車輪が空転するかしないかギリギリのパワー制御を自動的に行い、難なく充電器までたどり着くことができた。車両安定システムのチューニングが巧みで、雪のワインディングでも走りが非常に良いのも美点だった。20分充電し、充電率を73%に回復させる。
小谷から40.7km地点の信濃木崎で30分充電し、充電率は12%から77%に。さらに雪深い国体道路を経由して52.5km先の長野市で30分充電し、充電率15%から56%へ(充電器のエラーで想定の3分の2しか充電されなかった)と充電を繰り返し、長野市から33.7km地点、千曲川沿いの飯山市にようやく辿り着いた。