現代の「肩たたき」とは
降格や降級などの処分

 細心の注意を払っても「採ってはいけない人」を採用してしまうということはどの組織にも起こり得ます。どうやっても組織に馴染まない場合、最終的な解決策は証拠を集めて降格や懲戒処分へと持っていくことです。日本の法制度の下では、社員を簡単に解雇することはできないため、段階的なアプローチが必要となります。

 第一段階として、冒頭でも述べた通り行動改善の要望を行います。これには、いつ、どんな場面で、どのような発言や行動があり、それによって周囲のメンバーにどのような影響を与えたのかを、周囲のメンバーからの証言も含めて集め、具体的な事実を示しながら、どのような行動が問題であり、どのような改善が必要かを明確に伝えます。

 その人物が部門内で、直属のマネージャー以上に陰に陽に影響力を持っている場合など直属のマネージャーによる改善指導が難しい場合は、第三者である人事が問題の解決を主導することもあります。

 再三の注意にもかかわらず改善が見られない場合は、次の段階として降格や降級などの処分を検討します。これは一般的に「肩たたき」と呼ばれる処分です。外資と違って、日本の企業文化では降格処分はあまり一般的ではなく、降格ということ自体で、当事者に大きなダメージを与えることになり、場合によっては本人から退職を申し出るきっかけとなることもあります(だからこそこの対応は慎重に行う必要があるのは言うまでもありません)。

 そして、最終的な段階として懲戒処分がありますが、ここに至るまでには、会社として解雇回避のための十分な努力を行ったことを示す必要があります。これは「解雇回避努力義務」と呼ばれるもので、その人の雇用を守るために会社がどれだけの努力をしたかが問われます。「よほどの大事」でない限り、発動できるものではありません。

 懲戒処分を行う際にも、再三述べてきたように、日々の言動の記録が極めて重要になります。というのも、のちに裁判になった場合、具体的な事実に基づく証拠がなければ、会社側が敗訴する可能性が高いからです。問題が発覚してから証拠集めを始めるのではなく、日常的に記録をつけておくことの重要性もここにあります。

 今の時代には、オンラインでのコミュニケーションにおいても、問題のある言動を把握し、記録する仕組みを整える必要があるでしょう。

 このように、事実に基づいた行動改善の要望から始まり、改善が見られない場合は降格などの処分を行い、法的な要件を満たしたうえで、最後に懲戒処分という流れが解決の道筋となります。一度採用した人はどんなに問題があっても、簡単にやめさせることはできません。ひとつひとつ着実にしかるべき対応をしていくことになるのです。

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