自分は将来どうなるだろう……。そんな不安を持つ人は少なくないのではないだろうか。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など疑問がつきない。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。「力まず自然体でカッコいい大人」代表の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その言葉を見ていこう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

【働く人にこそ伝えたい】「ひとりBARデビュー」のすすめ
Photo by Takahiro Otsuji

ひとりの時間がほしくなったら

 酒を飲む人だったら誰でも「行きつけ」に憧れるんじゃないかと思う。

 その代表が「BAR(バー)」だと思う。

いきつけのBARを持っているか?

 仕事が終わって「ああ、もうこんな時間だ」なんてときに、遅くまでやっているBARに行って1杯やるってちょっと大人だ。

「ひとりBARデビュー」は40代

 俺の「ひとりBARデビュー」は実は遅い。

 40歳くらいだったと思う。

 それには2つ理由があって、1つは「サインしてください」って言われるのがイヤだったから。
 もう1つは、知らない店主と会話をするのが苦手だから。

 せっかく飲みに行っているのに「なんか話さなきゃ」と気を遣うのが嫌なのだ。

 だから若い頃は、ひとりでBARに行くことはほとんどなかった。

 でも俺も大人になったから、最近はひとりでもBARに行く。

最初は誰かと試してみる

 これから「BARデビュー」をしたい人におすすめなのは、まずは3、4人で適当なBARに行ってみること。

 そこで気に入ったら何度か通って、慣れたら「ひとりデビュー」という作戦。

 すでにデビュー済みの人も同じだけど、いきなり知らない店にひとりで行くのはおすすめしない。

1杯目は「ラフロイグソーダ」を頼め

 BARに着いたら1杯目はウィスキーのソーダ割り(ハイボール)を頼むといい。

 ウィスキーにはいろんな種類があるのだけれど、俺のおすすめはスモーキーな「ラフロイグ」。

 ちょっと泥臭いにおいがするスコッチだ。

 俺はこれをソーダ割りで頼むのがデビュー戦には一番いいんじゃないかと思っている(俺が好んで飲んでるだけ、って話もあるけど)。

「ラフロイグソーダをください」。

  これが言えればひとまず第一関門はクリアだ。

BARは働く人のサードプレイス

 最初は俺も緊張したけど、慣れてしまえばBARは結構、居心地がいい。

 大人になったら少し重い扉を開けて、ひとりでBARに入りたい。

 やってみたらそんなにハードルは高くないし、想像よりもフランクだ。

出会えない人と出会える楽しみ

 その店の「常連さん」と仲良くなるのもなかなか楽しい。

 BARにくる客は仕事とは一切関係ない人たちだから、仕事や家庭とは別の自分だけのコミュニティも手に入る。

 男は特に毎回知らない店に行くとビビるから、1軒は「行きつけの店」を持っておくと人生が楽しくなるかもしれない。

BARは寿司屋よりハードルが低い

 男が「行きつけ」を持ちたがるもう1つの店が「寿司屋」だと思う。

 でも寿司屋はひとりで行くには少しハードルが高い。

「通はコハダから食べる」とか、「これを頼むと『おっ』って思われる」とか、そういう作法があるようだから俺にはどうもしっくりこない。

 俺は結局、おいしければなんでもいいし、飲み食いはできるだけ考えずに楽しみたい。

 だから俺の場合はひとりで行くならやっぱりBARを選ぶと思う。

(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)