入札そのものがうまくいっていないということは、さらに価格が高いものが出てくる可能性があるが、まず驚くのは、1カ所のトイレに1億~2億円ほどもかかっていることだ。

 関西で公園トイレなどの建設を営む事業者は、匿名を条件に「2億円の万博トイレ」への見解を明かした。

「公衆トイレで2億円はさすがに高過ぎます。最近、兵庫県下であった大型トイレの建て替え工事(芦屋中央公園北便所棟建替工事)では、3800万円弱の落札というものがありました。『万博価格』ということで価格が上乗せされるとしても7000万円程度が妥当な価格ではないでしょうか。この価格から、大手ゼネコンがドン引きレベルのごっつい中抜きをすることを差し引いても、めちゃくちゃ豪華な建屋と内装になるのでしょうね」

 なぜ、税金で2億円もかかるトイレを万博に造る必要があるのか、まったく分からない。トイレにまで採算度外視で力作を求めた結果がこれである。

 私は2月初めに能登半島地震の被災地へ行ったが、水道インフラがズタズタになっているために建物のトイレは使えなくなっていた。石川県の七尾駅前にあったのは簡易型のトイレで、被災地の人、救助に来た人、ボランティアの人、日本赤十字社の人などが快適に使っていた。簡易型のトイレというと、汚くて臭いイメージがあるが、あれは清掃をきちんとしていないために起きていることだ。

写真:七尾駅前の簡易トイレ七尾駅前の簡易型トイレ。清掃が行き届いているので臭いも汚れもなく、快適に利用できた

 清掃が行き届いていた七尾駅前の簡易型トイレは、まったくもってきれいで、不快な思いは一切しなかった。要するに、豪華な建物など造る必要などまるでなく、掃除をきちんとすることにお金をかけるべきなのである。この辺りについては、やはり民間の感覚がないとしか言わざるを得ない。

 あれだけ行財政改革をしてきたはずの大阪維新の会であるが、万博に関しては態度がブレブレだ。大阪維新の代表である吉村洋文大阪府知事も、幹事長の横山英幸大阪市長も、万博協会の副会長に名を連ねているのだから、もう少しリーダーシップを発揮してほしい。大阪維新は「府市がバラバラだからムダ遣いがはびこる」という説明を繰り返してきたのだが、府市が一体となってムダ遣いをしていては意味がなく、説得力は皆無だろう。