しばらく両方のクリニックに掛け持ちで通院していたのですが、いまはアディクション専門外来だけに通っています。

 私は昨今話題の「宗教2世」でもあります。小学校の低学年の頃に親がエホバの証人に入信して、生活が一変しました。週に2回夜に、1回昼に集会に通って、聖書の勉強をしました。それ以外に週に1回、夕方に子ども向けの聖書物語を信者仲間に教えてもらう日もありました。

ゴムのホースで叩かれた悪夢が
フラッシュバックする

 エホバの証人は長年「輸血拒否」で有名でしたが、最近は「ムチ」と「忌避」の問題でも騒がれるようになりました。忌避とは教団内のルールを破った人(多くは結婚前に性行為をした人です)を公然と村八分にする「排斥」や、脱会を表明した信者と絶縁する「断絶」のことで、それらが人権侵害ではないかと物議を醸すようになったのです。ムチ問題のほうは、過激な体罰、つまり親信者から子信者への肉体的暴力の問題です。

 私は交通事故などの経験がないので輸血拒否の問題には無縁、子どもの頃に抜けたので忌避にも無縁ですが、ムチ問題では大いに苦しみました。ムチには革ベルトや物差しなどが使われ、うちではガスホースでした。あの硬いゴム製のホースで叩かれると、非常に痛くて悪夢のようです。

 診断されたわけではないのですが、私には複雑性PTSDもあると思っています。心的外傷後ストレス障害(PTSD)が、長期間の囚われによって、複雑化・深刻化するというもので、精神科医のジュディス・ハーマンが提唱したんですよね。

 過去の出来事がパラパラと再現なくフラッシュバックしてくる症状自体は、自閉スペクトラム症にも備わっていることが知られていて、杉山登志郎さん(編集部注/小児科、神経科、精神科の医師)が「タイムスリップ現象」と名づけましたが、これは一般的にはどうということもない出来事が自動再生される現象のようです。

 それに対して私の場合は、子どもの頃からおとなになったあとまでの胸苦しい体験がぐちゃぐちゃとフラッシュバックするので、やはりこれは自閉スペクトラム症の特性というよりは複雑性PTSDだと思うのです。