精神疾患に由来する苦悩から逃れるために、アディクションの問題は、思いかえせば、いつも身近だったと感じます。トシ(編集部注/共著者の松本俊彦)が紹介してきた、アディクションは快楽に溺れるためにではなく苦痛から逃れるためにハマってしまうという「自己治療仮説」には非常な説得力を感じます。

 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学院と、「なんだかじぶんだけうまくいかない場面が多い」とずっと感じてきて、「いわゆる学校社会がじぶんに合っていないのだろう」と思っていたのですが、社会人として働きはじめると、「一般社会のほうがじぶんに合っていない」とわかって、愕然としました。

 人間関係はうまく行かないし、フラッシュバックは毎日のようにあるしで──私は「地獄行きのタイムマシン」と呼んでいます──酒に溺れるようになりました。帰宅して、18時くらいから23時くらいまで飲みつづけて、何度もコンビニに買い足しに行って、日が変わった頃に眠る。休肝日は18歳のときから44歳の現在まで、合計30日に満たないと思います。やがて睡眠障害で苦しみ、鬱状態になり、休職しました。

親がエホバの証人に
入信し生活が一変

 アディクション以外の私の精神疾患について説明しましょう。まず私は、発達障害者です。

 休職したのは40歳のときで、初めて精神科のクリニックに通い、検査をして診断されました。自閉スペクトラム症(ASD。コミュニケーションの困難、こだわり、感覚過敏などを特性とする)と注意欠如多動症(ADHD。多動、衝動、不注意などを特性とする)ですが、ほかの発達障害もあります。発達性協調運動症(深刻な不器用や運動音痴を特性とする)と、限局性学習症(書字、読字、算数などの不得意を特性とする)の傾向があって、吃音が出ることもあり、子どもの頃はかなりのチック症で、いまでも名残があります。発達障害のカテゴリーに入る精神疾患がたくさん併発しています。

 診断されてしばらくは、発達障害の問題に強いクリニックに通いつづけたのですが、発達障害者支援センターの支援者に勧められて、お酒とのつきあい方を見直した方が良いと指摘され、アディクション専門外来のクリニックにも通うようになりました。