離婚を難しくする施策も登場

 一方で政府は、離婚を難しくする施策も行っている。

 2021年1月には「離婚冷静期(クーリングオフ、冷却期間)」制度を民法に導入。この制度では、婚姻登記機関が離婚申請を受理してから30日以内であれば、どちらか一方が離婚を撤回できる。政府はこの制度について、衝動的な離婚を防ぎ、夫婦に熟考の時間を与えるためだとしているが、ネットでは「結婚こそ冷静期が必要」「結婚を慎重にすれば、軽率な離婚も減る。政府は逆に動いているのではないか」「離婚のハードルが高くなるにつれ、結婚のリスクが高まった」という批判の声が上がっている。

 残念ながら、この制度はあまり効果が出ていないようで、2024年の結婚件数610万件に対して、離婚件数は262万件を記録。単純計算で「3組に1組以上が離婚する」という状況になっている

 中国は1949年の建国以来、「産めよ増やせよ」から「一人っ子政策」、そして今回の「結婚・出産奨励」へと、約70年間で5回も方針を転換してきた。皮肉なことに、現在も一部の農村地域には「子は一人、一生幸福」「寧可血流成河、不准超生一个(たとえ血が川のように流れても、1人たりとも多く産んではいけない)」といった一人っ子政策時代のスローガンが残ったままだ。

 時代がどんどん変わり、国家が手のひらを返すように大きな方針をクルクルと転換する……今の中国人、特に若い世代が、「結婚や出産といったプライベートな選択は自分で決めたい、国の政策に翻弄されたくない」と強く願うのは当然だろうと筆者も思う。

「結婚しないとクビ」「子を持たない者は不忠」「1万人合同結婚式」国も企業も必死…中国の異常な結婚奨励策