日本の医療システムを知らなくても、適切な治療を受けられるシステムを
また、日本のクリニックから大型病院、そして大学病院などの段階的なシステムは、その体制を知らないものに取っては非常にわかりにくいのも事実だ。医療現場の措置には問題がないとしてもこうした点は、特に利用者側の視線に立って変えていく必要がある。
たとえば、旅行者が宿泊するホテルには、その地域の言語サービスや外国人受け入れ病院の資料を必ず配備し、職員が宿泊客からのSOSに答えられるようにする。あるいは、有償でもいいから、医療通訳者(年々、人数は増えている)と個人旅行者がつながれるシステムづくりも必要である。
今年は日本各地の空港が大幅な空港使用料の引き上げを発表している。その目的は主にやってくる旅行者へのサービスや施設の拡充とされているが、できればその一部をさらにプールして緊急医療通訳事業に当てることも考慮してほしい。
さらに、一部の批判者の記事で指摘されていた、海外のカルテのオンライン相互往来の開発も頑張ってほしいところだ。報道によると、大Sは僧帽弁逸脱症という心臓病とてんかんの持病があったという。彼女の場合は家族が付き添っていたので、その旨は病院側に伝わっているはずだが、今後、短期間日本に滞在する旅行者が急病になったとき、その既往症が調べられるシステムは必要であろう。
もちろん、言語の壁はあるし、プライバシーを守るのは大事なことだ。中国のように個人プライバシーより情報共有が優先されるケースシステムを導入しろというつもりはない。ただ、海外の病院に記録された既往症や受診履歴を日本でも必要に応じて確認できるシステムができれば、医療の現場にとっても助けになることは間違いない。
大Sの死を無駄にしないために、さまざまな日本の現場に努力と変化を求めたい。