もちろん、これは「当然」という部分もある。カジノに関わる犯罪や治安維持には警察の力が必要不可欠だ。施設内部や周辺の警備、マイナンバーカード等による本人確認、反社会勢力の排除、さらマネーロンダリング対策を誰が行えるのかを考えていけば、警察しかない。2030年の開業を目指して、大阪IRには現役警察官だけではなく、警察OBなどが多く関わっていくだろう。
さて、そこで想像していただきたい。これから「カジノ対策のプロ」として世間の注目が集まっていくなかで、「警察官がまたオンラインカジノに手を出しました」という報道が続けばどうなるだろうか?
「おいおい、取り締まる側にもかなりギャンブル依存症みたいな人がいるのに、ちゃんと取り締まることができるのかよ? というか、カジノ業界とズブズブになっちゃうんじゃないの?」
こんな感じで、かつて「パチンコ利権」という言葉が注目を集めたように、警察官の天下りによる業界との癒着を疑う声が高まってしまう恐れもあるのだ。全国の警察を統括する警察庁としては、今の時期、このような警察のイメージダウンだけは絶対に避けたい。
しかも、「オンラインカジノ」という問題は、大阪IRの根幹も揺るがしかねない「爆弾」でもあるのだ。大阪IRの事業者であるMGMリゾーツ・インターナショナルは22年9月、スウェーデンを拠点とするオンラインカジノ運営会社「レオベガス社」を買収している。
実はここは18年10月から日本人向けのオンラインカジノを運営していた過去がある。つまり、日本では「違法」とされる収益を得ていた企業がMGMリゾーツの傘下に入ったということだ。それはつまり、MGMリゾーツが資金を出す「大阪IR」の建設、運営にも「犯罪収益」が原資になっている可能性もある。
というわけで、昨年3月、大阪市民らが東京地裁に対して大阪IRの計画取り消しを求めて提訴をした。
「いやいや、いくらなんでもそんな昔の話を蒸し返すなんておかしい」と言う人もいるだろうが、レオベガスが日本人相手にオンラインカジノを運営していた時期は、ちょうど高比良さんが利用していた時期と重なる。