セルフチェックで大丈夫?
プロの目が必要なワケ

 そして、新築住宅の建築には多額の費用がかかる。少しでも費用を抑えたいと考えるのは当然であり、「自分でチェックできるのでは」と思う方もいるかもしれない。インターネットで検索すれば、新築住宅のチェックリストといった情報は簡単に出てくるし、自分でできるなら「それに越したことはない」と。

 しかし、専門知識のない人が新築工事中の住宅を自分でチェックするのは非常に困難である。先ほど触れた建築の知見がないと判断が難しいケースも含め、建物の構造や施工に関する専門知識がないと、どこをどのようにチェックすればいいのか、何が問題で何が問題でないのかを判断することはできない。加えて現場は日々変化しており、チェックポイントも工事の進捗によって変わってくるのが実情だ。

 また、インターネット上の情報は玉石混交だ。インターネットで検索した情報のみを頼りに、専門知識がないまま指摘をすると、施工会社との間で認識のずれが生じ、トラブルに発展する可能性もある。新築住宅の品質を確保し、安心して住み続けるためには、専門的な知識と経験を持つプロに検査を依頼することをおすすめしたい。

 今回ご紹介したデータは、主に首都圏(1都3県)における、さくら事務所の検査結果をまとめたものである。このデータからは、少しずつではあるが、新築住宅の工事の質が良くなってきていることがうかがえる。

 背景には、住宅の品質に対する意識が高まってきたこと、そして、建築業界全体で、より良い家づくりを目指す動きが出てきたことがあるのかもしれない。また最近では、新築工事中にホームインスペクションを利用する人が増えてきた。そのため、施工会社も第三者の目を意識するようになり、それが不具合の発生を抑えることにつながっている可能性もある。

 ただ、すべての現場で同じように品質が上がっているかというと、そうとも言い切れないのが現状だ。ホームインスペクションを利用しない現場では、まだ改善が必要なケースもあるかもしれない。また、検査が入る現場に、ベテランの職人さんが集まる、ということもあるようだ。

 このような状況を考えると、新築住宅の品質をより確かなものにするためには、引き続きホームインスペクションの活用が大切だと言えるだろう。第三者の目でしっかりとチェックし、不具合があればきちんと直してもらう。そうすることで、住宅全体の品質が上がり、安心して長く住み続けられる家づくりにつながるはずだ。

(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)

さくら事務所公式サイト
https://www.sakurajimusyo.com/