参議院が与野党逆転となっており、野党としても政策修正力があることをアピールしたかった面もあった。
8月5日、政府・自民党はブリッジバンク方式(編集部注/破綻した金融機関の業務を、暫定的に引き継ぐ公的な銀行による破綻金融機関の整理方式)を柱とする金融再生トータルプラン関連法案を国会に提出したが、参議院での数の優位を背景とした野党の攻勢に、後退を続けた。
9月3日、野党は特別公的管理(一時国有化)を柱とする対案を提出した。小渕総理は野党案を丸呑みし、10月23日に金融再生法等関連法が施行された。金融再生法、改正預金保険法、早期健全化法が成立と施行、同日には長銀の特別公的管理開始が決定した。まさに長銀の破綻処理のための法律施行であり、日本発の世界恐慌を起こさないための特別公的管理を可能にするまで、長銀の資金繰りをつなぎにつないだうえでの破綻だった。
なお、金融再生法成立の背景には、民主党、自民党の若手議員の行動があった。彼らは「政策新人類」と呼ばれる。政策新人類は、自民党が塩崎恭久氏、渡辺喜美氏、石原伸晃氏、安倍晋三氏など、一方野党は枝野幸男氏、池田元久氏、古川元久氏などで、大手銀行の破綻処理、さらには法案策定等に関する与野党協議で中心的役割を演じた。
大蔵省が強く野党に働きかけ
ブリッジバンク方式も選べるよう追加
野党が押し通した特別公的管理のスキームと、政府案のブリッジバンク方式との比較をしておきたい。
特別公的管理(一時国有化)は、国が無償で金融機関の全株式を取得し、国というオーナーの管理の下で、最終受皿に破綻金融機関を譲渡するまでの間、業務を続けるというものである。金融機関は破綻し、株式の価値はゼロとなり、株主責任が追及される。言わばハードランディング的手法である。
一方、政府・自民党案のブリッジバンク方式は、国が定める金融整理管財人の下で、最終受皿にその金融機関を譲渡するまでの間、業務を続けるというものである。この方式では、株主責任は追及されない、言わばソフトランディング的手法である。
しかし、破綻か否かという点の違いは大きい。預金者は銀行の破綻に対して、敏感に対応し、預金などの引き出しである取付けが発生するリスクは高い。