バフェットに同居する
「無欲」と「貪欲」

 インタビューの冒頭いきなり、バフェットは日本の5大総合商社株を買い増したところだと話し始めた。「日本の他のすべての大企業に目を向けています」とも。ネブラスカなまりの英語の聞き取りに難儀しつつ、こうした発言は東京の株式市場にもそれなりに影響を及ぼすだろうと思って聞いてはいた。

 しかし、「バフェット効果」の神通力は、現場にいた私の予想をはるかに超えていた。発言が伝わるや否や、世界の投資家の視線が日本株に注がれた。2万7千円台で動いていた日経平均株価は、1年もたたず4万円の史上最高値に達した。上昇分のうちバフェットの貢献度がいかほどかは議論があろうが、彼の発言が「呼び水」となったのは間違いない。

 バークシャーは手元にうなるほどドルがあるのに、わざわざ円建てで社債を発行して投資資金を調達している。日本円だけの超低金利環境のメリットを享受しながら、外貨を稼ぎ、高配当を期待できる総合商社への投資に充てる。もし為替レートが円安に振れ、投資の価値がドル換算で目減りしたとしても、返済するお金も安くなった円で済む。

 確実に稼げそうな手を、したたかに打つ。しかし、稼ぎの目的が必ずしも個人的な欲得ではなさそうなのが、バフェットのバフェットたるゆえんだろう。

 いくつもの豪邸を構え、スーパーカーを乗り回し、大型ヨットで海に繰り出す──。そのようなアメリカの成功者のイメージとはかけ離れた、質素な暮らしぶりで知られる。大衆車を自ら運転して通勤し、マクドナルドのドライブスルーでハンバーガーとコカ・コーラを、ときに割引クーポンを使って買う。自分が納めた所得税の税率が秘書よりも低かったとして富豪に高い税金を課すよう呼びかけ、1300億ドル(約18兆円)相当に膨らんだ個人資産も99%超を慈善団体に順次寄付すると表明済みだ。

「もう何の欲もありません。私は92歳で、必要以上に多くのお金を持っています。もっと何かが欲しいなどと、どうやって言えるでしょう。65年間、同じ家に住んでいます。3軒も、5軒も、8軒も持ちたくはない。1軒で十分です。今の家が好きだし、仕事場から5分の距離にあります。子どもの成長などいい思い出がたくさんある。つまり、それで何もかもがいいのです。私は自分が理にかなっていると思う人生を生きています」