結局、人は見た目が9割

 女子会は「人ひとり分痩せた男」の解剖学で盛り上がる。恐ろしいのは、Aちゃんの上司やCちゃんの元カレだけでなく、参加者全員それぞれに「そういえば、あの人……」と顔を思い浮かべる“人ひとり分痩せたらやたらポジティブ&自己肯定感爆上がりした人”が一人以上いたことである。しかも奇妙なことに、その全員が男性なのだ。これは何を示唆しているのか。

「太っていることがコンプレックスで、自分の人生がうまくいかないことを体重のせいにしてたんじゃない?」「だから肥満を克服すると、それがあたかも人生の大逆転とか下克上みたいな錯覚に陥って、自分は特別な存在になったと勘違いするのかもね」

「痩せても本質は変わらないのに、きっと見た目が良くなっただけで周りの反応が変わるから、勘違いしちゃうのよ」、50代のエレガント系D子さんはズバリ指摘する。「体重と人格は無関係なのに、社会は見た目で判断するから。結局、人は見た目が9割、なのよね」

心のメタボは治らない、むしろ悪化する

「迷惑な話だよね~」と、鍋奉行を買って出ていたサブカルEさんがつぶやいた。「オマエがモテへんのは肥満だけが理由ちゃうわ」。誰かの顔を思い出しているようだった。「やですね、体の脂肪は落ちても心に脂肪のべったりついてる男……はい、この鶏肉は脂肪落ちてますから」。水炊きをよそったお椀を差し出す。テーブルは爆笑に包まれた。

「でもほんと、男女で違うよね」とCちゃん。「女の人って、痩せても『人並み』って思うだけで、『私、特別!』とはならない。それなのに男性は痩せた途端、なんか神にでもなった気になるよね」

「それはね」と、熱燗のおちょこをグイッと空けながらD子さんが解説する。「男は単純なの。彼らの脳内では『痩せる=勝利』という単純な方程式しかない。基準が、勝ったか負けたかしかないのよ」。「なるほど、痩せることで『人生勝ち組カード』を手に入れた気になっちゃうのか」とA子ちゃんは唸る。「しかし人生は長いから、リバウンドという罠(わな)もあるんだけどな……」