少し長くなるが紹介しよう。
「こんにちは、田中好子です。きょうは3月29日、東日本大震災から2週間たちました。被災された皆様のことを思うと、心が破裂するような……、破裂するように痛み、ただただ、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするばかりです。
わたしも、一生懸命病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でもその時には、必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います。それが、わたしの務めと思っています。
きょう、お集まりいただいている皆様にお礼を伝えたくて、このテープを託します。キャンディーズでデビューして以来、本当に長い間、お世話になりました。幸せな、幸せな人生でした。心の底から感謝しています」
そして、このメッセージはこんな具合で締めくくられた。
「特に蘭さん、美樹さん、ありがとう。2人が大好きでした。映画にもっと出たかった。テレビでもっと演じたかった。もっともっと女優を続けたかった。
お礼の言葉をいつまでも、いつまでも皆様に伝えたいのですが、息苦しくなってきました。いつの日か、妹・夏目雅子のように、支えてくださった皆様に、社会に少しでも恩返しができるように復活したいと思ってます。カズさん、よろしくね。その日までさようなら」
「もっともっと女優を続けたかった」という言葉が胸を打つ。カズさんとは、夫の小達一雄(女優・夏目雅子の実兄)のことだ。
当時の新聞報道によると、会場には約2100人のファンや関係者が参列した。一種独特な熱気に包まれたに違いない。
紡ぎ出されるメッセージから、スーちゃんの万感の思いも伝わってくる。当時、テレビ報道で見たのだが、霊柩(れいきゅう)車による出棺を告げるクラクションが鳴り終わったとき、キャンディーズの曲が突然、大音量でかかったのを覚えている。1973年9月に発売された明るいテンポのデビュー曲で、スーちゃんがリードボーカルをとる「あなたに夢中」である。
沿道には多くの男性ファンらが集まり、スーちゃんのイメージカラーである青色の紙テープを一斉に投げた。「スーちゃん!」と叫ぶも、涙声でよく聞き取れない。ファンにとっては、自分の家族を亡くしたような大きな悲しみだったに違いない。