張り込みの確度を上げた偶然
レストランを出た2人は…

 岳安さんはとあるレストランに入ったのですが、入り口がいくつもあるビルの従業員用かと思われるような裏口からビルに入り、レストランへ入店しました。その後女性が20分ほどして入店して岳安さんの席につきました。おそらく入り口を分け、時間差を設けた待ち合わせでした。

 2人が座った席も店内の一番奥で、隣り合う席は1席しかない場所を選んだようでした。時折視線を動かし周囲や入店者を確認しているようでした。

 プロの探偵から見れば、明らかに不自然な行動から、不倫関係にあるのは間違いない様子でした。

 私はレストランに入ることを想定していましたので、尾行・張り込み要員の男性調査員以外に、潜入要員として女性の調査員を手配していました。

 これは偶然でしたが、岳安さんが席についた直後に入店した女性調査員は隣の席に座ることができました。これはとても価値のある偶然でした。店内のBGMもそこまで大きくなく、ギリギリ隣の席の会話が聞き取れる距離の席を確保できたことは、多くの情報が取れるため調査の速度と確度を高めてくれるのです。

 私はその知らせを聞いて入店し、女性調査員が確保した席に座りました。岳安さんとは背中合わせになる状況で、入店時も印象に残りにくいタイミングの、岳安さんがスマホの操作に没頭している最中に着席できました。

 その後現れた女性と岳安さんとの会話から、女性は同じ会社に勤務する上司の女性と判明しました。総務部に所属する女性は、新たなプロジェクトをまとめるリーダーで、業務と相談を通して接点が増えたことで男女関係に発展したようでした。

 会話の内容は主にプロジェクトに関することでしたが、言葉の端々から親密さがうかがえました。

 お酒も数杯飲み、1時間ほどの食事を終えて岳安さんが先に席を立ち、店を後にしました。入店時の用心深さから退店のタイミングもずらすことを想定していたため、外で待機していた男性調査員が岳安さんを追いました。女性はお酒を飲みながら食事を続けていました。

 15分ほどして岳安さんがラブホテルに入ったとの連絡を受けました。その直後に女性は退店しました。その後を追って私たちも退店し、女性を尾行すると岳安さんが入ったラブホテルに入って行きました。