岳安さんは会社の事業内容を発信する広報担当なのですが、SNSやホームページは特段変わっているようには見えず、仕事量の変化は見られませんでした。岳安さんに聞いてみると「急に辞めた人の業務を担当するようになったから」と答えました。
貴江さんは休日出勤がない週末は、岳安さんがなるべくゆっくりできるよう、お出かけは我慢するようになりました。
その後も岳安さんの行動は変わり続け、これまではリビングのテーブルに置きっぱなしだったスマホを風呂やトイレにも持ち込むようになり、帰宅が遅くなったこともあり夫婦の会話が減っていきました。
そんなある晩、夫が寝た後にスマホに届いた通知が目に入りました。「また会いたい」というメッセージの通知は見知らぬ女性の名前でした。
貴江さんは違和感がありながら信じたい気持ちもありましたが、悩んだ末に「このまま曖昧にしてモヤモヤし続けるよりは」と、私の元へ相談に来られたのです。
社内不倫が始まる瞬間は、
意外と日常に潜んでいる
社内不倫は、思っているよりもずっと身近なところから始まります。
職場は1日の大半を過ごす空間です。共通の目標に向かって協力し、悩みや達成感を共有する中で、距離は自然と縮まっていきます。
以下のようなシチュエーションは、不倫の温床になりがちです。
◯同じプロジェクトやチームでの連携
◯上司と部下という依存関係
◯出張や研修の同行
◯社内イベントや飲み会
◯仕事や人生相談を通じて生まれる共感や癒し
これらはすべて“普通の業務”ですが、感情のつながりが恋愛感情へとすり替わるのに、それほど時間はかかりません。
岳安さんの調査を開始した初日に、定時であろう18時に会社を出た後に女性と密会していた事実を突き止めました。
貴江さんから聞いていた夫の岳安さん像からは考えられないほど、誰にも気づかれないように、慎重に慎重を重ねた行動をしていました。あとでわかったことから考察すると、社内でのダブル不倫ゆえの行動だったのでしょう。