一方で、所有者は相場の上昇に気づき、「4億円なら売ろう」ということになる。こうした売買の基準点となる価格を「アンカー価格」と言い、その後の購買行動にも影響を与える。「アンカー」とは船のいかりを下ろすことを意味する。人は最初に提示された「アンカー価格」を偏重しやすく、合理的な判断や思考ができなくなる。
つまり、突出した4億円の成約事例が1件でも生まれると、その物件の所有者はこの価格が基準になり、マンション内で共有される。「あの80平方キロメートルが4億円で売れたってさ」という具合だ。これまでの成約事例を見ながら冷静に考えると、2匹目のどじょうがいるのか疑問ではあるが、いないとも言い切れない。そこで、4億円は既定の事実と化してしまうのだ。
実際、4億円の成約住戸の登記簿をあげてみた。その結果は、ローンを組むことなく、中国人投資家が購入していた。これの再現性がどれくらいあるかはなんとも言えない。なぜなら、浜松町よりも好立地な場所の人気物件の相場は、そこまで高くないからだ。不動産でこうしたエリア間の相場逆転現象が起こる確率は、一般的には低いものだ。しかし、最近の相場上昇は狂乱的なのでそうとも言えなくなってきている。
投資家が買う「投資用物件」は
利回りと資産性が重視される
こうした相場上昇に乗りにくい不動産は多い。1つは、投資用物件だ。ファミリー向けの分譲マンションは自宅購入者が主たる買い手となるが、投資用物件は投資家が購入する。投資家の論点は利回りと資産性だ。前者はインカムゲインで、後者はキャピタルゲインになる。キャピタルゲインがどうなるかの先読みは難しい。
少なくとも、金利上昇局面の現在、将来の借入金利は今よりも高く、そうなると購入する物件の利回りは今以上に高くないと購入しにくくなる。ということは、賃料収入÷物件価格が利回りなので、賃料収入が変わらなければ物件価格は金利上昇とともに下がっていくことになる。キャピタルロスするということだ。