「あこぎな商売」→いや、ほんと。“あたたかいおじさん”が豹変した真意【あんぱん第6回レビュー】

フシアワセさんは誰?
嵩の人生もまた動き出す

 急に仕事を増やし、仕事場にはいつもよりも石がたくさん並んでいる。石は大きく重い。幼子がそばをうろうろしていると危険である。釜次の弟子の豪(細田佳央太)が仕事場からメイコを連れ出そうとすると、逆に墓石を支えていた木材に引っかかって、墓石が倒れてしまった。

 ああ、良かれと思ったことが裏目に。この墓石の犠牲に誰がなるのか――心配なところで「つづく」に。フシアワセさんは誰?

 さて、父を亡くした子どもはもうひとりいる。嵩だ。彼も大好きなお父さん・清(二宮和也)の亡くなった悲しみが癒えないうえ、母・登美子(松嶋菜々子)までいなくなってしまった。

 それが皮肉にも、実の弟・千尋(平山正剛)との関わりを深めていくことになるとは。ふたりで並んで父のつくった漫画雑誌を読む姿はじつにうるわしい。少年漫画雑誌の表紙の少年のように一点の濁りのない清潔感にあふれていた。

 父・清は雑誌の編集をしていて、そこには漫画が掲載されていた。嵩はその漫画にわくわくする。

 嵩のモデルであるやなせたかしの『やなせたかし詩集 てのひらを太陽に」(河出書房新社)の151ページにこんな文章がある。

〈父の書き残したものを読んで見ると「私は人生において、三つのことは生涯やっていく。それは絵と詩と雄弁だ」三番目の雄弁はとにかくとして、ぼくは自分の中に父の意思があきらかに生きているのを感じます。〉

『あんぱん』第6回ではこのやなせたかしの文章の、最初の一歩が描かれたように思う。

「あこぎな商売」→いや、ほんと。“あたたかいおじさん”が豹変した真意【あんぱん第6回レビュー】