小さな一歩でも前に進み
日々の努力を積み重ねる
小野 とはいえ、目の前の借金があると苦しく感じさせるし、ある一定のお金を稼ぐ力がないと、現代では生きにくさを感じやすいのは事実でしょう。ですが、今ある現実が突然変わることも、人の能力や才能が突然育つことも現実の世界では起こるわけでなく、まずは小さくとも一歩から前に向かい進み始め、日々の努力の積み重ねで、願う姿へと未来を変えていくしかないのも現実だと思うのです。
そのためには、まずは自分に自信を少しでも感じて、前に向かおうという心持ちにわずかでも火が灯るよう、半ば祈るように「大丈夫ですよ」と伝えさせていただきます。
香山 龍光さんは、ビジネスの才能があって成功しているのに、それを捨てること自体にネガティブな反応、たとえば惜しいとか、もったいないとかという表現をした方はたくさんいましたか。
小野 そうですね。今もたまに、批判という形で、あなたのような方がそれをしないのは駄目でしょうというようなご意見をいただくこともありますね。
香山 あなたがそれをしないのは社会的損失ですよ、みたいな。私もそう言いそう(笑)。
小野 そうです。お叱りをいただくこともあります。すべてに対して、ご意見いただいて、ご興味持っていただいたことにありがとうございますと伝えさせていただいております。
香山 私も、大学の先生をやめて北海道に行ったときに、「もったいないんじゃないの?」とか、よく言われましたね。でも、もったいないというのは、もちろんそれは評価してくれておっしゃっているんだけど、ネットなどの匿名の世界では、逃げたなとか、落ちぶれたとか、都落ちをしてざまあ見ろみたいなことを言ってくる人もけっこういたんです。
いまだに、東京に住むのが偉いとか、社長や大学教授になれたら勝ちという、とても単純な権威づけや勝敗のピラミッドが多くの人のなかの価値判断としてあるんだなということがわかって、面白いなと思いましたね。龍光さんはそういう俗世間の価値基準をすっかり捨てて久しいわけですし、何の未練もないですよね。