不安を払拭する手作りの資料が積立金の大幅増に貢献

廊下1回目の大規模修繕工事から10年がたつが、外廊下の壁や床は美観を保っている  Photo by Ryoichi Shimizu

 修繕積立金の増額は免れない状況を前に、「段階増額積立方式」から「均等積立方式」への移行が検討された。通常、「段階増額積立方式」を採用する管理組合では、5年程度での積立金値上げが想定されている。値上げの度に総会で区分所有者に合意を求める場合、合意が得られなければ長期修繕計画が頓挫することも考えられる。

 その点、「均等積立方式」であれば、50年、60年にわたる長期修繕計画においても修繕費用総額から予算を作りやすく、また、将来を見据えた先手での修繕も実行しやすい。

 17年10月に行った住民アンケートでは、急変緩和方式(*注)27.2%に対して、65.8%の住民が「均等積立方式」を希望しているという結果が推進の理由となった。

「均等積立方式」への移行を前提に算出された修繕積立金は、月額平方メートル単価210円。これなら築50年まで値上げも一時金の徴収も不要となり、将来大幅に負担が増えるリスクが抑えられる。

 とはいえ、戸当たり月額平均9000円ほどの値上げである。反対意見が出るのは十分予想できた。そこで管理組合では、住民の「納得感」をキーワードに、配布資料や説明会用の資料を徹底的に作り込んだ。

「自分も住民の一人として、説明会で何を聞きたいかを考えた上で、一つ一つ疑問を潰していくやり方で資料の作成を進めました」(中島氏)

 長期修繕計画の見直しには、国土交通省のガイドラインにのっとったものであることを強調し、長期修繕計画の必要性、修繕積立金の積立状況と今後の見込み、210円という金額の根拠まで、具体的な数字を基に、逐一積み上げていった。

 同時に、積立金不足で修繕が滞れば将来どうなるか、マンションの資産価値がどんどん下がっていいのかと、住民たちの心に訴えかけたという。万全の準備をした上で、全住民に対し、計3回の説明会を実施した。

「住民説明会でプレゼンをした後は、拍手をいただいた会もありましたが、月額の負担増を考えると住民の皆さんも苦渋の賛成だったと思います。ニューロシティは永住志向が高く、当時は現役ビジネスパーソン世代も多かったため、長期的な観点で資産価値を維持したいという気持ちが、このような結果として表れたのだと思います」(中島氏)

*注 修繕積立金額を2段階に分けて増額し、住民負担を軽減する方式