ところが、そのドライバーによると、大型のバスの運転にはどうしても必要なミラーだという。そのミラーがないと大きな事故を起こしてしまうかもしれないというのだ。

 ドライバーはマイクを使って、そんなことを参加者に伝えた。そして電話でバス会社に事故の顚末を報告した。

 結局、バス会社から代わりのバスが来ることになった。その新しいバスが来るまでツアー一行はおよそ1時間、高速道路のパーキングエリアで待つことになった。

ドライバーは神対応、でも参加者は激怒
添乗員が味わった座席再編の大変さ

 その間にドライバーは参加者全員に缶コーヒーを買ってきて配った。私にもくれようとしたので固辞した。しかし、相手が強くすすめるので、結局はいただくことにした。

 こういうコーヒーを配るところなど人柄が表れている。好印象を持ったのは正しかったのだと思った。

 1時間がムダに過ぎてしまった。けれどもコーヒーを配られては参加者もしょうがないなと思ったのでは。

 やがてバスが到着した。しかし、そのバスは45人乗りなのである。ガーンである。

 すぐに新しい座席順を組み直さなくてはならなかった。バス会社としても49人乗りのバスは台数に限りがあり、仕方がなかったのであろう。

 今日のツアーは1人参加が2組、4人グループが1組、残りはすべて2人参加である。

 要するに、はじめのバスでは1人参加の人は1人で2席を確保できたのだ。

 それが新しいバスでは1人参加の人には相席してもらうしかない。そんな事態になり、1人参加の人がむくれてしまった。とくに2人のうちの片方の年輩者が、「冗談じゃないわよ」とブツブツ文句を言い出した。

 まあ、無理のない話ではある。それまで1人で2席を確保してゆったりしていたのだ。それがいきなり見知らぬ人と相席に、と言われたのだから。

 私がこのツアーに1人参加して同じ目にあったら、やはりムッとする。怒った人の気持ちは十分すぎるくらいに理解できるのだ。

 それも皆、あのドライバーのミスのせいなのだ。ドライバーは平謝りに謝った。しかし、年輩者はなかなか許さないのだ。