最初の目的地の熱海に近づいた。私がドライバーに近寄って声をかけた。するとドライバーは「朝の打ち合わせの通りで、ほかに何もないよ」とのこと。取りつく島もなかった。
そうして彼はただ黙々とハンドルに向かっている。ちょっと私を拒絶しているのかと思った。
これには少々まいりましたよ。たいしたことを聞こうとしたわけではない。でも、あの態度は何なんだ。こっちもちょっとムッとしてしまった。
続いて伊東の土産物店、そして昼食とコースが続く。またドライバーに声をかけようとした。けれども向こうはまたまた拒否のオーラ全開なのだ。
何なんだよ。どうやら完全に私を拒んでいるようだ。そんなことが重なり、こっちも、もういいやとなってしまった。
初心者マークの添乗員ならドライバーの知識や経験を頼りにする。私も2、3年目くらいまではドライバーを頼りにして添乗業務をしていたものだ。
でも、それ以降はドライバー次第だ。ドライバーがいい人ならこっちも心を開く。逆に、意地悪をされれば心を閉じる。
今は私だって5年の経験がある。いいよ、そっちがそうくるなら、こっちだってやりたいようにやるまでだ。
このドライバーはいつのツアーでも、こんなふて腐れた態度を取っているのかな。それとも添乗員の私が気に入らず、今回は特別なのかしらん。そんなふうにいろいろと考えてしまった。
以降はドライバーと口もきかなかった。今日のコースはほとんど行ったところばかりなので何とかなる。ドライバーにも頼ることなく無事に務めましたとも。
ツアーも終わりに近づき、アンケートの時間となった。今日のコースは問題もなかった。ちょっとばっかりドライバーと変なことにはなったが。でも悪いのは向こうだよ。
「よくぞ書いてくれた!」
アンケートの破壊力
ツアーが終わり、さすがに最後にドライバーに「お疲れさまでしたー」と声をかけた。
相手も首を軽く振って挨拶した。まあ今日の最後としては上出来の別れでしょう。