何よりビックリさせられたのが、中国メーカーです。事務局長のジャトロン氏は、「中国勢のライバルは中国勢。互いがけん制しながら値引きと特別オファーで競争しています。半年に一度かそれ以上のペースで値下げがあるので、ユーザーも『また下がるのでは?』と思い、買い控えが起きているほど」といいます。
中国EVメーカーの筆頭株であるBYD(比亜迪汽車)は、「モーターショーは値引きがいっぱい!」と題して、コンパクトEV「ドルフィン」を49万9900バーツ(約213万円)から販売。また、フル電動の人気SUV「Atto3」を最大10万バーツ(約42.6万円)、同クロスオーバーSUV「シーライオン7」を最大15万バーツ(約72.9万円)値引きするなどしていました。
GWM(長城汽車)は、高級SUV「HAVAL H6」に最上位の保険を1年間無料で付け、プラグインHEVモデルの場合は家庭用充電器もプレゼント。他にも、車載インターネットパッケージによる車両監視、5年または10万キロ以内(いずれか早い方)まで走行距離に応じた3年間のメンテナンス費用(消耗部品を除く)、5年間の24時間緊急ロードサービス、HEVバッテリー品質保証8年間(走行距離無制限)なども全て無料提供でした。
なかでも一番の大盤振る舞いは、吉祥汽車が新型車「JY AIR」を対象にしたプロモーションです。JY AIRは小型のセダンで、車両本体価格は75.9万バーツ(約325.4万円)と比較的安価。特別プロモーションとして、クルマ本体とモーターの保証は8年間または15万km、バッテリー保証は8年間または80万kmを提供します。ただし、驚くのはその点ではありません。
JY AIRを購入すると、吉祥汽車と親会社が同じ吉祥航空(Juneyao Airlines)のゴールド会員資格が3年間無料でゲットできるのです。吉祥航空は上海を拠点とするフルサービスキャリアで、ANA(全日本空輸)などと同じ航空連合スターアライアンスのコネクション・パートナー(準加盟扱い)です。
さらに、吉祥航空の4席分チケットが3年間無料、路線無制限でプレゼントされます。300万円のクルマを買うと、家族4人が3年間も路線無制限で飛行機に乗れるだなんて、爆安としか言いようがありません。吉祥グループにしてみれば、飛行機の空席も埋まるしクルマも売れれば一石二鳥なのでしょう。
バンコク国際モーターショーは、3月25日のVIPデイを含めて4月6日まで開催されました。前出のジャトロン氏によれば、開催期間中におよそ5万台の契約が決まるといいます。タイ国内の年間販売台数は57万2675台(2024年)なので、13日間で国内販売の9%弱を契約してしまう恐るべき場が、バンコク国際モーターショーなのです。




