自分は将来どうなるだろうか……。そんな不安を持つ人は少なくない。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。吉川晃司との新ユニット「Ooochie Koochie」(オーチーコーチー)も話題の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その頭の中をのぞいてみよう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

Photo by Takahiro Otsuji
後悔していることはあるか?
俺は「これをやっておけばよかった」という後悔がほとんどない。
ニューヨークに行ったときは「英語」をやっておけばと思ったけれど、俺はいまニューヨークを拠点にしていないから、将来のためにこれから英語を習いたいとは思ってないし、「勉強しておけばよかった」と後悔することもあまりない。
「こんなこと言わなきゃよかった」みたいな後悔もほとんどない。
この歳になるとそういうことも別にどうでもよくなってくる。
選んだ方を正解にする
キャンパスライフもちょっとやってみたかったけど、これも後悔という話じゃない。
大学は行ったら行ったでよかったかもとは思うけど、行ってないからわからない。
行くかどうか悩んだ末に行ってなかったら後悔したかもしれないけれど、俺は悩みもしなかったからそこに後悔はやっぱりない。
というか決断するとき俺はその都度、割と「どっちでもいい」と思っていて、「どっちを選んだとしてもそこそこなにかはあるだろう」と思っている。
だから「選択を間違えた」っていう後悔がまったくない。
最近の唯一の「後悔」とは
俺が唯一、後悔があるとしたら、実家の近所にあった小さな焼肉屋が閉まって行けなくなったことだ。
そこは焼肉屋なのに中華そばも頼める店で、いつでも行けると油断してたら閉店した。
なんなら「そろそろ行くか」と思っていたからショックだった。
「どうせまずいんだろう」と思っていたけど、最近になって「どうやらこれは俺の好きな感じの店じゃないか?」と思い始めた。
でも行ったことがないから、うまかったのかまずかったのか、俺好みの味だったのかわからない。
なんならちょっとSNSで紹介されて最近いい感じだったから、人気がなくなったわけでもなくて、多分、ご主人が歳で店を閉めたのだろう。
一番つらい後悔とは?
声を大にして言うけど、行こうと思ったところには行っておいた方がいい。
行って失敗だったらそれはそれでいいわけだし、いろんなものがいつまでも永遠にあると思ったら大間違いだ。
こういうこともこの歳になって改めて気がついた。
やらなかった後悔が一番悲しい
チャレンジなんてなんでもそうで「いつでもできるからいまやらなくてもいいか」なんて思っていると急にできなくなったりする。
そういう後悔は一番つらい。
人間、永遠に「いつでもできる」ことなんてない。
俺は「なんでそんなこともわからなかったんだ!」って、閉まった焼肉屋を思い出すたびに後悔している。
(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)