平安の雅が香る宇治で、藤とつつじを訪ねる

藤とつつじの花の共演が見られる平等院この時期、藤とつつじの花の共演が見られる平等院 写真提供:平等院

 次の花めぐりは、『源氏物語』最終章「宇治十帖」の舞台であり、昨年は大河ドラマ『光る君へ』で人気が再燃、その余韻が冷めやらぬ宇治へ参りましょう。藤原道長の別荘が前身となる世界遺産平等院は、末法の世に生きる人びとが現世に見る極楽浄土として心のよりどころにした阿弥陀堂(鳳凰堂)がシンボルです。

 藤原氏の家紋でもある藤の花。国の天然記念物である牛島(埼玉・春日部市)の樹齢が1200年超というように、藤は寿命が長く繁殖力も強いため、古くから縁起の良い花とされてきました。平等院の境内には3カ所の藤棚があります。鳳凰堂前の阿字池(あじいけ)ほとりと南門近くには野田藤、表門手前には野田藤の園芸種で肉厚のだるま藤が優美な花を咲かせます。阿字池の畔を彩る藤は樹齢280年とも伝わり、花房が1mを超えるものもあることから、「砂ずりの藤」と称されます。

 藤の花の見頃は例年4月中旬~5月上旬。見頃が過ぎると、翌年に備えて剪定が行われます。藤棚の北側に立つ観音堂が現在改修工事中のため、今年は藤棚の公開エリアが一部制限されることになります。お出かけ前に、平等院の公式サイトで、開花状況と共に確認しておきましょう。

 平等院を訪れたら、ぜひとも鳳凰堂の内部も拝観を。大仏師・定朝作の阿弥陀如来坐像(国宝)は、対峙する人をあまねく包み込んでくれるような、おだやかな表情をたたえておられます。阿弥陀様の周囲で雲に乗り、恍惚の表情で楽器を奏でる雲中供養菩薩全52躯の躍動感あふれるお姿も見逃せません。雲中供養菩薩の半数がおられるミュージアム鳳翔館も必見。藤と寺宝をひとしきり鑑賞した後は、境内のカフェ「茶房藤花」でひと休み。香り高い本格宇治茶をいただきましょう。

 次は平等院から北東方面へ約2km、歩いて30分ほどの三室戸寺へ。西国三十三所第十番、“花の寺”としても有名です。京阪電車で「宇治」から「三室戸」駅まで乗っても同じくらいの時間がかかるので、この季節は徒歩がおすすめです。

 山の斜面に広がる庭園は、約5000坪!2年の歳月をかけて本堂西側の斜面に昨年完成した約1万株の「久留米つつじ園」。赤、白、ピンク、紫の4色の小ぶりな花が咲き誇り、4月27日(日)まで、初の一般公開中です。白、ピンク、紫の3色が咲きそろう「平戸つつじ園」は約2万株と関西の社寺では最大級。5月11日(日)まで公開されますが、こちらは例年ゴールデンウイーク前後が満開となるそうです。

三室戸寺(宇治市)の平戸つつじ園三室戸寺(宇治市)の平戸つつじ園