
「夢の年金生活」は夢でしかないのが現実。だが、好きなことを仕事にして収入を得る楽しい老後は夢ではない。今の60代は引く手あまたで、再就職先はたくさんある。高齢者の雇用市場の需要と職探しの最適解を、高齢者専門の精神科医・和田秀樹医師が解説する。本稿は、和田秀樹『定年後の超・働き方改革 「楽しい仕事」が長寿に導く!』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
クビにならない士業は
クライアントがいる限り続けられる
理想を言えば、50代のまだ元気なうちに、新たな挑戦として資格を取得しておくのは得策です。「定年のない仕事」を早めに考え、そちらに軸足を置くことが重要なのです。
たとえば、難しくはありますが税理士や宅建(宅地建物取引士)などの国家資格を取っておければ、定年後の独立も可能です。
ケアマネジャー(介護支援専門員)もひとつの例です。最初に介護職の実務経験を積み、その後試験に合格すればケアマネジャーになれます。これもニーズが高い仕事なので、長く働けます。
また行政書士も、これまでの仕事の延長線上で取りやすい資格のひとつです。難しすぎず、実利に結びつく資格と言えるでしょう。
もちろん定年後、時間に余裕ができてから学び始めるのもよいでしょう。私が教授をしていた大学では、臨床心理士の資格を取るために、定年後に大学院に通っている方もいました。
要は、「肩書がなくなる」という不安にとらわれるよりも、「次にどう生きるか」を前向きに考えることが大切なのです。定年後も自分を生かす道はたくさんありますから、今から少しずつ準備しておくと、将来への道がぐんと開けますよ!
弁護士や開業医などの自営業は、クライアントがいる限り続けるべき職業です。
弘中惇一郎さんという超売れっ子弁護士をご存じでしょうか。“無罪請負人”という異名を取り、79歳になった今でも現役で依頼が絶えない弁護士さんです。ロス疑惑や薬害エイズ事件の弁護など数々の難事件で無罪を勝ち取ってきたことから、世間でも知られる存在になりました。
お金や趣味やよりも
仕事が心底好きな人たち
それほどの実績があれば、年齢に関係なく仕事は舞い込んでくるものです。周囲が「そろそろ引退したら?」なんて気づかうのも野暮な話。クライアントがいる限りは、仕事を続けるのがもっとも賢明な選択です。
とはいえ、仕事を効率的に回す方法は考えるべきです。ある程度の年齢を超え、管理職的な立場になったら、現場のスタッフをうまくマネジメントすることが肝要です。
これは、どんな組織においても言えることですよね。
つまり、全案件を自分1人で抱え込む必要はありません。信頼できるスタッフを雇ったり、育てたりすればよいのです。これが、長く続ける秘訣です。本人に負担がかかり過ぎないことに加え、社会貢献になるというメリットもあります。実際、病院経営においてもそのような形は珍しくありません。