それは薬害と言ってもよいでしょう。運転が必要なお仕事をされる方は、特に気をつけてください。
高齢になるにつれ、複数の薬を常用している人は増えます。しかも高齢者は代謝が落ちているため、薬の副作用が出やすくなります。すると低血糖や低血圧、低ナトリウム血症などで、意識障害を起こしやすいのです。
頭がボーッとしたり、歩き方もヨタヨタしてくることから、認知症と間違われることもあります。なかでも注意すべきは睡眠薬や鎮痛剤、精神安定剤などです。
暴走事故を起こした高齢ドライバーが、ふだんはしない暴走をしながら、当時の状況を振り返り「よく覚えていない」と答えることがありますよね。あれこそ、明らかに意識障害を疑ってよい証言です。
服薬ではなく運動で
血糖値を下げた
それなのに、高齢者すべてをひとくくりにして、「免許を返納しろ!」と迫るのが今の日本社会です。人権侵害、“高齢者差別”と言ってもよいでしょう。
もし免許返納を高齢者に求めるなら、まずは多剤服用の危険性を社会に知らしめるべきです。しかし、私がテレビでこの発言をしたら全部カットされてしまうのが実情です。それでも認知症を疑われていた人が、薬の飲み方を改めたところ、頭の働きも身体能力も改善することは珍しくないのです。
ですから、高齢者自身も「不必要な薬を飲んでいると事故を起こしやすくなる」と考えを改めてほしいのです。
つまり免許返納を考えるより、薬の見直しをするほうが先です。

和田秀樹 著
長く働こうと意気込むあまり、突然ジムに通い始めたりするのもお勧めしません。それまでに運動習慣がなかった人の場合、筋肉に炎症を起こしやすいからです。それに転んで骨を折ったりしては、大惨事になってしまいます。
運動を習慣化したい場合は、軽度の簡単な運動をムリなく続けることです。通勤もいい運動になります。
じつは私自身は数年前まで、まったく歩かない人間でした。移動手段はタクシーと自分の車のみ。するとある日突然ものすごく喉が渇き、1週間ぐらい続いたことがありました。異変を感じて血糖値を測ると660mg/dlもありました。これはまずいと思い、散歩とスクワットで300mg/dlまで下げました。
そんなことがあってから、今でも歩くことだけは続けています(ただし炎天下の散歩は危険ですのでやめましょうね)。