さらに、40歳以上80歳未満の約3000人を6年以上追跡調査したところ、「生きがいがあるとはっきりいえない者、ストレスがある者、頼られていると思わない者はそうでない者に比べ、年齢、喫煙、飲酒、高血圧の既往歴を調整しても循環器死亡のリスクが上昇していた」という結果も出ている。
紹介したように、生きがいが健康長寿につながるという報告は多い。
では、生きがいがあることが、どのようなメカニズムで健康につながるのだろうか。それについてもいくつかの研究報告があるようだが、生きがいの研究というのは難しい側面もあると思っている。
なぜなら、何を生きがいとするかは人それぞれであり個人差が大きいものであるからだ。また、生きがいとは主観的でスピリチュアルなものでもあることから、医学的に研究することは難しいのではないかと思うのだ。
ただ、私の医師としての経験もふまえて考察するに、生きがい、つまりは楽しいこと、熱中できること、あるいはやるべきことがあると、気持ちに張り合いが生まれ、精神的に満たされる。もしくは前向きな気持ちになれる。
毎朝「よっこらしょ」
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心が元気になれば、行動も変わる。日々の生活にも意欲的になり、積極的に人と関わったり、社会的な活動に参加したりもするようになる。さらには、いつまでも健康でいられるようにという意識も高まり、運動をしたり、食事に気を配ったりということもするようになるかもしれない。
その結果、心も体も健康になり、長生きできるというストーリーが成り立つのではないだろうか。
正直なところ、現代医学でそのメカニズムは説明できない。人体に関する多くの不思議がいまだ解決されていないように、生きがいは医学を超えた神秘的なパワーなのだ。小難しい理屈は抜きにして、そのパワーを信じてみる価値はあるだろう。
「これをしたら体によくないからやめよう」とか「健康になるためにこうしなければ」などと考えて義務的に運動や食事といった生活習慣を改善するのは、楽しくないし、つらいだけだから長続きしない。
でも、自分の好きなことや楽しみを見つけ、それに打ち込むことで自然に健康になれるとしたら、そんなハッピーなことはないだろう。