私自身が健康でいられるための「生きがい」は何だろうか。考えてみたところ、1つはやはり「仕事」だと思い至った。これはどちらかというと、趣味や好きなことというよりは、やるべきことの範疇だろうか。

 小脳梗塞の後遺症で歩行障害があるなか、毎日仕事に通うのは大変だ。でも、私が行かなければ困る人がいる。施設に着けばスタッフが頼りにしてくれる。入所者も待っていてくれる。そう思うと「行かねばなるまい」という気持ちになり、毎朝ソファから「よっこらしょ」と立ち上がるわけだ。

 入所者の健康管理をしなければならない。新たな入所者が来れば健康状態や服薬状況の確認もしなければならない。病院に行くことが必要なら紹介しなければならない。施設ではやるべきことがたくさんある。

花と小鳥に囲まれて…
暮らしに彩りを加える習慣

 歩くのが不自由で、杖を使わなければ歩きにくい。ゆっくりとしか歩けないから回診も以前よりずいぶん時間がかかるようになった。それでも自分がしなければならないことがあるということ、必要とされているという意識は、「よし、がんばるか」という気持ちにさせてくれる。

 さらに、多くの人と関わること、話をしたり考えたりすることは脳への良い刺激になっているし、歩き回ることはリハビリにもなっているだろう。

 また、私は朝の日課として、ベランダの花々に水やりをしている。我が家はマンションだがベランダが2つあり、妻も私も花が好きなため、鉢植えがたくさん置いてある。季節ごとにさまざまな花が目を楽しませてくれるが、なんせ数が多く、水やりだけでもちょっとした運動になる。

 私は最近、毎朝の花の水やりに加え、ベランダにやってくる小鳥のために少量のエサを置くようになった。何羽かでやってきては、チュンチュンとかわいい声を聞かせてくれる。

 生活に、ささやかながら新たな楽しみが加わった。