いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

職場で大出世する人が「絶対にしないこと」ワースト1Photo: Adobe Stock

信頼されると力が引き出される

 信頼して任せる技術は、定量化が難しいため見過ごされがちだ。しかし、優れたリーダーは必ず持っているはずである。

 プロジェクトがスタートしてから「あれはどうした」「これはできているんだろうな」とちょくちょく口を出すのではなく、スタート前にすり合わせを行ったうえで、あとは各自に任せる。

 内心は心配なこともあろう。しかし、「信頼しているよ」という雰囲気を出すのだ。任されたほうは、信頼に応えようと120%の力で頑張ることができる。

「信頼してもらえている!」と感じると、力が引き出されるものなのだ。自分の過去の仕事を振り返ってみても、信頼して任せる技術を持っている人と一緒に仕事をすると、私は120%の力が出せた。

 ライターとして駆け出しの頃は当然ながら経験や能力が足りず、じゅうぶんに期待に応えられなかったかもしれない。しかし、未熟なりに120%頑張れた。

 そして、その「信頼して任せる技術を持っている人」たちは、現在、みんな良いポジションについている。とても偉くなっているのだ。「え、あの会社の副社長!?」「この会社の取締役!?」など、ビックリするが、納得でもある。

彼らはマイクロマネジメントをしない

 それは彼らが、周囲の人の力を引き出せるリーダーだからである。

 あらためてそういうリーダーたちのことを考えてみると、彼らは基本的に穏やかで、感情の波をあまり感じない。怒っているところを見たことがない。信頼して任せるのにはリスクもあるはずだが、問題が起きたら起きたで淡々とそのフォローをしている。いわゆる「マイクロマネジメント」とは正反対だ。

 そうか、これがストイシズムか。

 ストア哲学者のエピクテトスは、他人はコントロールしようとせず、信頼して任せなさいと説いている。

人を信頼する

わたしたちは、まるで航海に出ているかのように行動している。
わたしに果たせる務めは何か?
総舵手、乗員、日取り、好機を選ぶことだ。
そして、嵐がやってくる。
さて、それでわたしに何を懸念しろというのか?
わたしの務めはすでに果たした。
その問題は別の誰か、つまりは総舵手が担うものだ。
(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 リーダーとしてやるべきことはある。プロジェクトに誰をアサインするのか、期限をどうするか、どう進行するのかなど、さまざまなことを考えなくてはならない。全体の責任を負うというプレッシャーもある。

 しかし、やるべきことをやったなら、あとはもう自分のコントロールを離れると思ったほうがいい。

 そこからは口を挟まないよう徹底するのだ。

 だが、これが意外とできない。

 難しい課題があったとき、「こうしたほうがいいのでは」と言いたくなるし、心配で仕方ないだろう。

 だがそれでも、「それぞれがやるべきことをやっているのだ」と思って、勇気をもって任せることができれば、最終的にいちばんいいところに辿り着けるはずだ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)