バズる文章は「構成」に秘密がある
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

思わず読み進めてしまう「キャッチーな構成」4つのコツ
SNS、note、ブログ、オウンドメディア、書籍など「たくさんの人に読んでもらいたい」というときは、次の4つを押さえて構成をつくるだけでもキャッチーな印象になります。
①導入はとことん短く
背景や外部環境などの周辺情報は最低限におさえ、早めに本題に入りましょう。前置きを設ける場合でも、いきなり小難しい話から入らず、やさしい話題を選んだほうが読みやすくなります。
②「つかみ」にこだわる
やっぱり「つかみ」は大切です。
「この文章、もっと読みたいな」と思ってもらうには、映画の予告編のようにおもしろい部分を先出ししたり、ドキッとする書き出しで始めたり、なんらかの工夫を凝らすべきです。あとは「本記事の要約」のように読みどころを最初に提示するのもいいですね。
ぼくもコンテンツをつくるとき、たとえば「3つの方法」がテーマなら、3つのなかでも一番キャッチーなものを最初にもってきます。ビジネス書で順不同の章立てだったら、一番刺さりそうな章を前にもってくることが多いです。
できるだけ前に、おもしろい情報を集める。出し惜しみしない。
これを意識すると、中盤以降の内容に対して「このままだとつまらないから別の切り口にしよう」とか「思いきって削除しようか」となるかもしれません。
③見出しの数を多くする
見出しは「給水地点」のようなもの。そこで水を飲むかどうかは読者次第ですが、主催者としては給水所を設置して「次の区間はこういう道ですよ」と案内してあげたほうが親切ですよね。
見出しが少ないと、読者は「どこで気持ちを切り替えればいいんだろう」「休憩なしで読みきれるかな」と不安になります。
「いやいや、これくらいの長さは付いてこられないとダメだよ」というスタンスをあえて選ぶならいいのですが、より多くの人に届けたいのであれば、見出しはちゃんと置いておくべきです。
目安となる見出しの頻度は、ウェブ記事なら、スマートフォンの画面スクロールで1~2画面に1個、文字数だと約400~800文字です(改行や空行が多いともっと少ない文字数で1スクロールするので、スクロールと文字数、どちらを基準にしても大丈夫です)。
テキストベースの資料やレポートなら、A4の横書きで1ページに最低2、3個はほしいところです。
難しい場合でも、大見出しのなかに小見出しを入れたり、箇条書きを入れたりして、少しでも見た目をよくする工夫が大事です。
④「接点」をたくさんつくる
ヒットする本にはどんな共通点があるのか? ぼくもずっと考え続けているのですが、答えのひとつは「接点の多さ」にあると思っています。
たとえば、この連載は「ビジネスパーソン向け」を想定しているのですが、実際にはビジネスパーソン以外でも文章力を上げたい人はたくさんいます。学生、主婦・主夫、学者ライター、仕事をリタイアした人――。年齢や職業を問わないテーマです。
それに、ひとくちにビジネスパーソンといっても、「メール経由のアポ獲得率を高めたい営業担当者」もいれば、「社内アンケートの回答率を上げたい人事担当者」もいるかもしれません。
つまり、文章をうまく書けるようになりたいという目的は同じでも、その背景は人それぞれに異なるわけです。
そう考えると、一冊のなかで「それ、わかる!」と共感してもらえる接点をいかに多く設けられるかがポイントといえそうです。
具体的には、構成の段階で「ターゲットとシーンの多様性」を意識します。
たとえば見出しレベルで「ここはリーダー向けに」「ここはメールを書くときの悩みに」と、全体テーマから外れない範囲で刺さるポイントを散らしていく。もしくは、本文中で「たとえば◯◯の立場であれば、こういう方法も考えられます」みたいに、「たとえば」を用いながらいろんな視点を織り込んでいく。
大切なのは、独自性と共感の両立です。
掘り下げる過程では、自身の経験や業界の話に固執せず、「この部分なら違う立場の人にも参考になるはず」という接点を意識して書いていく。独自性を生かして設定したテーマはぶらさずに、いろんな人が「自分にも当てはまる!」「このたとえ話、イメージしやすい!」と思える部分を増やしていく。
これが、多くの人に読んでもらえるコンテンツをつくるコツだと考えています。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。