子どもへの性加害のほとんどは、被害児やその家族が信頼を置く身近な人物の犯行によるものだと言います(Finkelhor and Shattuck, 2012)。
近しい家族、多少なりとも交流のある親戚、ベビーシッター、習い事のコーチや学校の先生、宗教団体の指導者。
そう、場所がどこであれ、子どもがいれば、そこには子どもを狙う犯罪者が潜んでいる可能性があるのです。その猟場は、いまやネット上にも広がっています。
インターネットが暮らしのすみずみまで浸透し、子どもたちの所在地や日常生活に関する情報は、犯罪者たちにとっても入手しやすいものとなってしまいました。
最初に知っておきたい
「子どもの性被害」の定義
ここでいったん、児童性被害の定義について整理しておきましょう。あいまいさは混乱のもとですから。
わたしが所属する「ダークネス・トゥ・ライト」(編集部注/児童の性的虐待を防止することを目的に作られた非営利組織)では、児童性被害を次のように定義しています。
児童性被害とは、強制、強要、説得といった一方的な圧力をもっておこなわれるあらゆる性的行為のうち、当事者に未成年者を含むものをいう。性器の露出や窃視、わいせつな図像等を見聞きさせること、電話やインターネットを介した性的な会話など、肉体的な接触を伴わない行為もその対象となる(Townsend, 2013)。
性暴力被害者の支援を目的とする米国最大級の非営利組織「レイプ・虐待・近親相姦に関する全国ネットワーク(The Rape, Abuse, and Incest National Network:RAINN)」による定義はもう少し具体的で、次のように、児童性被害にあたる行為を列挙したものとなっています。
・未成年者の眼前で自慰行為をすること。
・未成年者に対し自慰行為を強要すること。
・対面、電話、ショートメッセージ、ソーシャルメディア等でわいせつな会話をすること。
・児童ポルノにあたる画像や動画を制作、所有、配布すること。
・膣、口腔、肛門等による性交において、未成年者をその対象とすること。
・性的人身取引に関与すること。
・性的な意図のもと未成年者に対しておこなわれる、上記以外のあらゆる行為。
―RAINN, 2023