14万部→49万5千部、売上爆増の秘密とは?

給料遅配→社員に借金のドン底から「日本一売れてる月刊誌」が生まれた驚きのワケハルメクホールディングスの宮澤孝夫社長 Photo:朝日新聞出版、上田泰世

「ハルメク」をメディアの会社と見るのは正確ではない。「ハルメク」を定期購読でとると別に「ハルメクおしゃれ」という通販のカタログ雑誌がついてくる。このカタログには、シニアの女性向けのオリジナルの服や靴が掲載され、読者は電話やネットで注文できるようになっている。

 たとえば、2023年4月号の「ハルメクおしゃれ」には、冒頭に「着るだけでなんだか品よく見えるブラウス」という商品が掲載されている。このブラウスは、実は「ハルメク」の読者と、編集部、通販本部が何度もミーティングを重ねて1年にわたってつくりあげたオリジナル商品だ。カタログ雑誌のほうでは、9990円という定価と商品番号とともに、巻末には注文先の「ハルメクお客様センター」の電話番号が大きく掲載されている。

 本誌のほうでは、「 “なんだか品がいい”おしゃれの基本ルール」という特集があり、そのブラウスの着こなしが開発ストーリーとともに紹介されている。

 この税込み9990円のブラウスは、7000枚を売るヒット商品となったが、この連携こそが、 「ハルメク」の強みだ。

 本誌の特集でこのブラウスが紹介されているのは一部で、他のページでは、シニアの女性が品よくみえるシャツワンピースやロングベストなど他のメーカーの商品が自由に紹介されている。つまり編集権は独立している。

 ハルメク事業の売上220億円のうち、雑誌の売上は15%にすぎない。67%が通販からの売上になる。しかし、雑誌は、物販をするためのカタログ誌ではない。 「ハルメク」の部数は日本ABC協会の考査をうけているので、14万部から49万5千部まで部数が伸びているのは、正真正銘中身が支持をうけているからだ。

 この編集と物販の絶妙の連携こそが、 「ハルメク」の強さの秘密だ。

 しかし、経営が苦しくなったユーリーグの買収のためのデュー・デリジェンスを2008年に宮澤孝夫が行ったときには、この連携はまったくとれていなかった。