「いつも浅い話ばかりで、深い会話ができない」「踏み込んだ質問は避けて、当たり障りのない話ばかりしてしまう」上司や部下・同僚、取引先・お客さん、家族・友人との人間関係がうまくいかず「このままでいいのか」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
世界16カ国で続々刊行され、累計26万部を超えるベストセラーとなった『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』から「人生が変わるコミュニケーションの技術と考え方」を本記事で紹介します。

思い切って質問する
リーダーシップ・コーチのモニク・リンダースは、「新しいリーダーシップ」と題されたセミナーに参加したときの出来事を話してくれた。
照明が落とされた小さめの室内で、パワーポイントのプレゼンテーションが始まった。グラフや財務数値が掲載されたスライドが次々と表示されていく。
すぐに彼女は困惑した。このプレゼンのどこが新しいリーダーシップと関係があるのだろう?
周りを見まわして、他の参加者も同じように戸惑っていないか探ってみたが、みんな平然とした顔をしている。
そのまま15分が経過した。彼女はようやく勇気を出して手を挙げ、自分が正しいセミナーに参加しているかどうかを講演者に尋ねた。
「心臓がバクバクしていたわ」と彼女は言う。
「プレゼンの内容を新しいリーダーシップと結びつけられなかったのか、と思われるのが怖かった」
講演者は神経質そうに書類をめくり始めた。
しばらくして、恥ずかしそうな顔をして、プレゼンの内容が間違っていたことを認めた。
他の参加者は一斉に安堵のため息をついた。
そのうちの1人が言った。「ヘンなプレゼンだな、ってずっと思ってたよ」
良い質問をするのは、飛行機から飛び降りることと似ている。
パラシュートが開くかどうかはわからない。
着地先の地面が柔らかいのかでこぼこなのかも、付近の住民に歓迎されるのかどうかもわからない。
だが良い質問をするのは、自分のためでもなければうまく着地をするためでもない。
良い質問は相手のためにある。
相手はそれによってより深く考えられるようになり、新たな視点で物事をとらえられるようになる。
この相手への贈りものは、質問をした側にとっては気まずいつまずきになるかもしれない。
しかし、信じてほしい。
それは、支払う価値のある代償だ。
(本記事は『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』の一部を抜粋・編集したものです)