毎度のように財源確保に苦労し、地元の関係者やボランティアの献身に頼っているようでは存続が危ぶまれますし、実際に終了を余儀なくされたケースもあります。継続には予算の確保が必要です。祭りという文化の灯を消さずに後世に継承していくためには、地域関係者の合意を踏まえたマネタイズへの着手が迫られているのです。
青森ねぶた祭にて
「100万円特等席」が完売
青森ねぶた祭は100万人以上の観光客が集う重要無形民俗文化財で、全国区の知名度を誇ります。海外からもツアーが組まれ、世界中にファンがいます。約10メートルにも及ぶ大きく鮮やかなねぶた(と呼ばれる、山車に乗せる人形)は、ねぶた師や絵師が1年かけて製作したもの。そして、祭りが終われば、また、来年の新たなねぶたの製作を行います。
ねぶた師と呼ばれる熟練の職人の技術に支えられ、継承されてきたねぶた祭ですが、彼らの年収は皆さんが想像するよりもはるかに低く、熟練の腕に見合う報酬とはとても言えません。
従前から多くの有料席は設けられていましたが、パイプ椅子に座って眺める席がほぼ一律で3500円でした。それなのに、旅行会社が設けた1泊2日のホテル宿泊代に有料席が付いたツアープランだと12万円といった高額で設定され、しかも飛ぶように売れるのです。それだけの金額を出してもねぶた祭を見たいという顧客ニーズがあるものの、その利益は祭りの運営サイドや担い手にはあまり還元されないという不条理が生じていたのです。
「祭りに携わる人たちに、もっとお金が落ちないものか?」という思いを出発点に、祭支援企業「オマツリジャパン」とともにねぶた祭に関わるようになりました。
そして、新型コロナが収束を迎えた2022年に青森県の観光コンテンツ開発事業の一環として企画したのが、100万円で最大8名が座れるVIPシートです。100万円の席は地場産の食材にこだわった郷土料理や酒が振る舞われ、そしてねぶた祭を最前の特等席で眺められるというプログラムです。
