このような価値を理解してもらえる高単価の客に、ねぶた師が自らねぶたの歴史についての説明を聞ける時間も提供することとしました。これだけの高額をいただくのですから、畳に座椅子といった設えにも配慮しています。

4年ぶりに黒字化
900万円の儲けに

 価格を100万円にしたのは、話題づくりという大きな意図もありました。インパクトのある数字を示すことでメディアの取材が入りますし、その対応の中でねぶた師をはじめとする地元の方々がどれだけの負担を抱えながら1年に1回の晴れ舞台に自らを捧げているのかという切実な実情や、祭りで構築する地域への経済効果の重要性を発信したかったのです。一部からは「金儲けのための祭りではない!」といった批判はありましたが想定の範囲内で、むしろ彼らの努力を伝える効果を上げられたと認識しています。

 この取り組みは高額プランなので、顧客へのプロモーションが重要課題でした。クレジットカード会社や旅行会社を通じて優良顧客やVIPツアーの常連客などと関係を築きました。実際に、VIPシートの購入客の中には東アジアやアメリカからの客もいて、ねぶた祭への世界的な関心の高さをうかがわせました。

 売れ行きは好調で、2年間は赤字が続きましたが、3年目となる2024年は会期の5日間全席が連日完売するまでになりました。ちなみに、このVIPシートの一部は、これまでは資材置き場として立ち入り禁止となったスペースを有効利用したものです。

 VIPシートだけではなく、4名24万円のボックスシート、2名12万円のカップルシートも用意し、こちらも完売です。また、コロナ収束による観光需要の復活やインバウンド向けにも有料席収入が伸びたことからねぶた祭は2023年に4年ぶりに黒字化して、2024年も900万円あまりの黒字となりました。

 プレミアム席を購入する富裕層は、「雑踏に巻き込まれるのは嫌」というマインドを持っていることは容易に想像できます。であれば、特等席を用意して特別なサービスを提供しニーズをすくい上げることで、しっかりと収益が図れるのです。