とはいえ、制度がジョブ型的になる以上、運用に緩みがあったとしても、これまでよりはジョブ型的な人材マネジメントになります。

 人材マネジメントが職能型からジョブ型になると、登用や処遇の時間軸が変わります。「累積貢献度」を加味することなく「リアルタイム」で、つまり、年功序列ではなく現在の実力で判断することになります。

 それがジョブ型導入の目的でもあり、歓迎する若手人材も多いでしょうが、その若手人材にしても、同じポジションで同じ仕事を担当する限り、処遇が上がり続けることはありません。

新入社員の約24%が
「3年以内に離職する」と回答

 有り体に言うと、社員は、「頑張り続けていれば、いずれ会社が応えてくれる」という期待をしなくなるでしょうし、会社も、「社員は将来を楽しみにして、会社のために頑張ってくれる」という期待は持てなくなります。

 企業と社員との関係は、無期雇用の正社員であっても、比較的短い期間を念頭に置いた経済的交換の色合いが強くなるはずです。それ自体については、いろいろな感じ方があるでしょうが、好むと好まざるとにかかわらず、その方向に進むだろうということを、企業はしっかりと認識しておく必要があります。

 たとえジョブ型という話がなくても、企業と社員との関係は「数年程度の比較的短い期間を念頭に置いた経済的交換」だというのが、最近の若手人材の感覚かもしれません。

 厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者37.0%、新規大卒就職者32.5%で、いずれも前年度より上昇しています。マイナビが発表した「新入社員の意識調査(2023年)」でも、約24%が「3年以内に離職する」と回答しています。

「ジョブ型」という単語はともかくとして、職務給は、第2次世界戦後間もなく、1940年代後半にGHQによって輸入されたもので、けっして目新しくはありません。

 日本において、その「仕事」基準の給与が普及したのかというと、経営側は経済復興に向けた労働力確保のために、そして、労働側は安定的な生活改善のために、いずれも終身雇用と年功序列型賃金を支持し、職務給は普及しませんでした。

年功序列を見直すべく
ジョブ型導入が発生

 その後、日本経済は1950年代後半から1960年代にかけて高度経済成長期に入り、1970年代以降は経済が安定成長期に移行する中で、労働者の高齢化が進むにつれて、勤続年数に応じた年功序列型賃金による人件費負担が増大していきます。