ネガティブな部下こそ1on1
「苦手な部下とちゃんと話すことができる」。これは、これからの管理職に必要なスキルだと思います。
たとえば、給料が高くて、でも昇進はしていない――そういう部下とちゃんと向き合って、組織の成果にうまくつなげていく。これができる管理職の価値は高い。
そもそも、管理職は部下よりも高い給料をもらっています。だったら、不満を抱えている部下を変えていく努力をするのは、上司の責任でもある。
その人が成長に意欲があるかないかは関係ない。まずはきちんと聞くこと。不満を全部聞ききる。これも1つの練習だと思ってほしい。
不満を途中で止めてしまうと、「どうせこの会社は変わらないから」って言われて終わりになる。
でも、全部聞ききって、そのうえで「じゃあどうする?」と一緒に考える。それが1on1の本来の姿なんです。
「働かないおじさん」は傷ついている
年齢を重ねて、給料も上がったけど昇進できなかった。
そんな人たちは、自分が「働かないおじさん」ってラベルを貼られていることを、意外と自覚しています。
会社はそんなこと言ってないよって言っても、本人の中では貼られている。
正直なところ、こういう人をポジティブな方に向けるのは、時間がかかります。
でも、そこを丁寧にやれるかどうかが、管理職の価値なんです。
10年、20年かけて周囲や自分に貼られたラベルを、剥がしていく。
誰にでもできることじゃないです。でも、それができたら、上司であるあなたの市場価値は本当に高くなる、そう思って、1on1に臨んでほしいと思います。
(本記事は、『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』に関連した書下ろし記事です)
・パーソル総合研究所取締役会長
・朝日新聞社取締役(社外)
・環太平洋大学教授 ほか
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。著書に『1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める』(吉澤幸太氏との共著、ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著、光文社新書)、『残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社新書)がある。