AIが進める自動化・省人化の衝撃
人に残されるのは暗黙知の仕事だけ
――AIの台頭がマーケティングに与える影響はすごく大きいのですね。
ビジネスの現場では、生成AIの登場で変化の流れが加速しています。これまでもメーカーの製造ラインでは、AM(オートメーション)化によりデータに基づいて一定のパターンで機械に仕事をさせるなど、実質的なAI活用をしていました。情報をデータに置き換えて色々な相関関係を教えれば、それなりに自動化はできたのです。
今はその相関関係までAIが分析し、何をやるべきかを自分で考えられるようになった。さらに、取り込むデータは数字だけでなく、言語、絵、音楽などマルチモータル(複数の異なるデータを統合して処理するシステムや手法)になっています。
そうなると、何が起きるかは明白です。AIがデータ化できるものを全て取り込み、そこから新しい価値を自分で作れるようになる。当然ながら自動化・省人化が進み、人間の仕事はどんどんなくなっていきます。
自動化・省人化とは、時間、お金、肉体労働など、あらゆるものの物理的な距離をゼロにすること。世界中に輸出された現場効率化のプロセスであるトヨタ看板方式、垂直統合で原材料調達と徹底した在庫管理を行うユニクロ経営といった人間の英知に、AIが入り込んでくるわけです。
経営学の大家、野中郁次郎氏が生前指摘していたように、形式知化できるものは全てAIでやれるようになり、人間には暗黙知でやる仕事しか残されないでしょう。あと5~10年で、この動きは本格化する。極論すると、将来人間は仕事をするどころか、手や足を動かすことさえなくなり、必要なのは脳だけになってしまうかもしれませんよ。