――まるでSFのような話ですね。多様なITツールや方法論を用いて、一般のビジネスパーソンもある程度高度なマーケット分析が可能な時代になりました。そこにAIが絡んでくると、マーケターの仕事はどうなるのか、すぐに想像がつきません。これからの時代に、プロのマーケターが持っていなければいけない視点とはどんなものでしょうか。

AI時代を生き残るためにマーケターが持つべき「たった一つの視点」

 楽しむ、食べる、話すなど、消費者にとって生きている意味を見出せるものは、みんなAIが作り出せるようになるでしょう。そんな中で、自社のプロダクトやサービスがどういう役割を果たしていて、次にどこへ向かっていくべきかを考えることが、これからのマーケターや経営者の使命となります。

 実際のところ、技術革新によって仕事がなくなるのではないかという不安は、過去にもありました。たとえば私は、1990年代にコンピュータがオフィスに普及し、データ分析を初めてソフトウェアでやったときに「自分の仕事をとられてしまうのではないか」と不安になりました。それまで、電話帳みたいに分厚いデータブックを見ながら、電卓で計算して、マーケティング分析をしていたのですから。

現在の仕事はなくなっても
新しい仕事は増えていく

 しかし一方で、技術革新が起きると新しい仕事も増えていくものです。スマートフォンが出てきたときも、メディアの人々は「仕事がなくなるのでは」と危機感を抱きましたが、逆にスマホ関連の新しいビジネスがたくさん出てきた。オールドメディアだって、今でも存在しています。世の中のニーズが新しい形で生まれていて、重なり合いながら、それを満たす新しいプロダクトやサービスに変わっていったということです。だから、一概にAIによって仕事がなくなるわけではないのです。

 ただ、技術と社会は変わり続けるため、新しい仕事が生まれる一方で、現在のマーケターの仕事は8割方なくなってしまうでしょう。AIによる技術革新は、過去から積み上げてきたものを突然断ち切ってしまいます。

 そのときは過去の延長線上で考えるのではなく、未来を見据えてそこから遡り「今やるべき仕事」を考えることです。見るべきポイントは、人の生活が将来どうなって、どんな新しいニーズが生まれるかです。