クルマ好きを魅了する本物志向の1台

 パワートレーンは、モーターの過渡特性を最適化。加減速時のアクセルレスポンス向上を図った。カタログ表記のスペックは標準車と共通だが、良好な反応をダイレクトにタイヤに伝えるため、アクセルワークに対して気持ちよくクルマが応える。これはドライブシャフトのねじり剛性を向上させたことも効いているに違いない。

 足も素晴らしい。車高を10mm下げてFALKEN製スポーツタイヤを装着したほか、ブッシュ、スプリング、ショックアブソーバー、電動パワーステをよりスポーティな特性にチューニングした。さらに、ボディ剛性向上のためフロア下とロアバックにブレースを追加している。

 ベース車は乗り心地がよい半面、コーナーでのロールが大きく、ハンドリングはどちらかといえば曖昧。さほど運転して楽しいキャラクターではなかった。ところがGRスポーツは印象が一変。操舵に対して応答遅れのないリニアな操縦性と、軽快な回頭性を実現している。まさしく意のままに操れる。切る側だけでなく戻す側もキレイについてくるので修正舵も少なくて済む。

 手応えの増したステアリングと、引き締まった足回りが生むフラットな乗り味、専用シートによるサポート感などからは、ドイツ車のような骨太な雰囲気が感じられた。これだけ走りがよいと後席の乗り心地が硬いのではと心配したが、そんなこともなかった。快適性への配慮もぬかりない。

 ヤリスクロスに走りの楽しさを求めるなら、迷わずGRスポーツを勧める。適度にコンパクトな経済的なSUVで、スポーティなモデルは少数派。クルマ好きを魅了する本物志向の1台である。

(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/小久保昭彦)

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